業務の効率化によって「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことができれば、コストの削減や増益などが期待できます。
そのため、多くの企業で業務の効率化を検討していますが、具体的にどのような方法で行えばいいのか分からないという担当者も少なくありません。
そこで本記事では、業務の効率化を行う具体例として11選ご紹介します。 また、業務を効率化する上でのメリットやデメリット・手順なども一緒に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.業務の効率化とは?ムリ・ムダ・ムラの具体例
業務の効率化とは、既存の業務内容や業務フローなどにおけるムリ・ムダ・ムラを削減して効率的に業務を行う施策のことです。
ムリ・ムダ・ムラに関する具体例は以下の通りです。
- ムリ:達成しなければいけない目標と現状が大きくかけ離れており、現場で働く従業員が心身共に疲弊している
- ムダ:効率の悪い方法で業務を行っているため、就業時間内に業務が終わらず残業が発生している
- ムラ:業務マニュアルや業務フローなどが作成されておらず、担当する従業員によって業務クオリティが大きく異なる
上記のような具体例以外にも、企業によってさまざまなムリ・ムダ・ムラが存在しています。
しかし、業務の効率化によって解決することが可能です。
1-1. 業務の効率化を実施する企業が増えてきている要因
業務の効率化を実施する企業が増えてきている要因として挙げられるのが、少子高齢化による労働人口の減少と働き方改革関連法の施行です。
日本の少子高齢化問題は年々深刻になってきています。
経済産業省が発表した「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」に
よると、2050年の段階で日本の人口は約1億人まで減少する見込みであることが判明しています。(「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」の3ページ目を参照。)
人口に比例して労働人口も減少するため、人手不足に困っている企業も少なくありません。
また、政府は2019年4月1日に施行した「働き方改革関連法」によって、残業時間の上限が原則で月45時間・年360時間に制限されました。
これらの影響から、これまでと同じような業務内容や業務フローは通用しなくなってきています。
そのため、少しでもムリ・ムダ・ムラを削減して業務を効率化する企業が増えてきているのです。
1-2.業務の効率化に併せてBPRも意識することが大切
業務の効率化と密接な関係にあるのがBPRです。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フロー
はもちろん、組織の構造なども根本的に見直す業務改革のことを指します。
元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2人が提唱した施策です。
1993年に「リエンジニアリング革命」が出版されたことによって世界中で注目を集め、日本でも一時期普及しました。
業務の効率化は、BPRにおける施策の一環でもあります。
そのため、業務の効率化に併せてBPRも意識しましょう。BPRについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!
2.業務を効率化する5つのメリット
業務を効率化するメリットは以下の5つです。
- 生産性の向上が期待できる
- コストを削減できる
- 利益の向上につながる
- 従業員満足度が向上する
- 優秀な人材を確保しやすくなる
順番に解説します。
2-1.生産性の向上が期待できる
業務を効率化することで、これまでと比較して業務の遂行に必要なリソースを抑えることが可能です。
抑えた分のリソースをほかの業務に充てられるため、生産性の向上が期待できます。
2-2.コストを削減できる
経営状況の悪化に伴い、少しでもコストを削減したいと考える企業も少なくありません。
業務を効率化することで、労働時間の短縮につながります。
その結果、残業代やオフィスにかかる電気代などのコストを削減することが可能です。
2-3.利益の向上につながる
企業の利益は、売り上げを伸ばすかコストを削減するかのどちらかによって増やせます。
業務を効率化することで、不要なコストの削減だけでなくリソースも確保できるようになるため、新規事業を立ち上げたり、既存の事業拡大に注力したりすることも可能です。
その結果、利益の向上につながります。
2-4.従業員満足度が向上する
業務を効率化することによって、労働時間が短縮されて残業する機会が減るため、これまでよりも働きやすい環境となります。
また、増益にも期待ができるため、利益の一部を福利厚生に充てたり給与に反映したりすることで、従業員満足度が向上するはずです。
2-5.優秀な人材を確保しやすくなる
最近の求職者は、企業の成長や待遇よりも働きやすさを企業選びの軸としている傾向にあります。
求人サイトや就活メディアを運営している株式会社L100が公表した「2023年度卒業の就活生が企業を選ぶ上で最も重視するポイントの調査結果」によると、企業を選ぶポイントとして働きやすさを最も重要視していることが判明しました。
業務を効率化することで、従業員が働きやすい環境を構築することが可能となります。
そのため、働きやすさを自社の魅力の一つとしてアピールすることで、優秀な人材の確保が期待できます。
3.業務を効率化する2つのデメリット
業務の効率化はメリットだけではなく、デメリットも存在します。
主なデメリットは以下の2つです。
- 一部の従業員から反対の声が挙がる可能性がある
- 効果が実感できるまで労力や時間がかかる
一つずつ解説します。
3-1.一部の従業員から反対の声が挙がる可能性がある
業務を効率化することで、労働時間が短縮されて残業する機会が減ります。
そのため、プライベートを充実させたかった従業員にとっては喜ばしいことです。
しかし、残業する機会が減るということは、これまでのように残業代がもらえなくなるので、業務の効率化に反対する従業員も少なくありません。
業務の効率化を実施する上で従業員の協力は必要不可欠のため、反対意見を考慮した上でどのようにしていくか決断しましょう。
3-2.効果が実感できるまで労力や時間がかかる
業務の効率化は、これまでの業務内容や業務フローなどを改めて見直して新たな施策を講じます。
そのため、効果が実感できるまで労力や時間がかかります。
短期的な目標で考えてしまうと、失敗につながる可能性があるので、注意しましょう。
4.業務を効率化するための5つの手順
以下の5つの手順で業務を効率化していきます。
- 現状を把握する
- 目標やスケジュールを設定する
- 業務を効率化するための施策を検討する
- 実際に業務の効率化を行う
- 効果検証
順番に解説していきます。
4-1.現状を把握する
業務を効率化するためには、既存の業務内容や業務フローなどにおけるムリ・ムダ・ムラとなる問題を見つけ出す必要があります。
そのためにも、まずは業務全体を可視化して現状を把握することが重要です。
ムリ・ムダ・ムラだと感じる要素については、実際に現場で働いている従業員が一番理解しているはずです。
そのため、従業員の意見も参考にしましょう。
なお、業務において問題や課題を見つけるには、以下の項目を参考にしてみてください。
・業務そのものが属人的ではないか
・業務に配置する人員は適切か
・業務フローは明確であるか
・特定の業務にのみ工数が増加していないか
・業務マニュアルは用意されているか
・業務に使用するツールは十分に活用されているか
・従業員のスキルは不足していないか
4-2.目標やスケジュールを設定する
現状を把握後、目標やスケジュールを設定します。
目標は抽象的ではなく、数値を用いた具体的な内容に設定することが大切です。
また、業務を効率化するにあたって効果が実感できるまで時間がかかるので、長期的なスケジュールで考えましょう。
4-3.業務を効率化するための施策を検討する
業務を効率化するための施策を検討します。
自社が抱えている問題や予算などを考慮した上で、最適な施策を選びましょう。
施策の具体例は、次項で詳しく解説します。
4-4.実際に業務の効率化を行う
実際に業務の効率化を行います。
業務の効率化は施策によって時間がかかるため、従業員のモチベーションを維持するためにも、小さな目標もいくつか設定しましょう。
また、いきなりすべての業務を効率化しようとすると従業員の負担が大きくなります。
そのため、着手しやすい目標からスモールスタートするのがおすすめです。
4-5.効果検証
業務の効率化を実施したら、効果検証も忘れずに行いましょう。
具体的には、以下の内容について評価していきます。
- スケジュール通りに行われているか
- 実施する前と実施した後でどのような効果が表れているか
- 問題やトラブルは発生していないか
定期的にPDCAを回すことが大切です。
5.業務を効率化するための具体例11選
業務を効率化するための具体例11選は以下の通りです。
- 不要な業務をすべてリストアップする
- RPAツールを導入する
- リモートワークを推進する
- データを一元管理できるシステムを導入する
- オフィス家具にこだわる
- マニュアルを作成する
- アウトソーシングを利用する
- コンサルタントを活用する
- ペーパーレス化を進める
- デスクレイアウトを変更する
- 業務に優先順位をつける
一つずつご紹介します。
5-1.不要な業務をすべてリストアップする
話し合うことがない会議や誰も必要としない資料の作成など、業務のなかには実施しなくても支障をきたさないような不要な業務があるはずです。
不要な業務を削減するだけでも大幅な業務の効率化につながります。
そのため、まずは不要だと思われるすべての業務をリストアップしてみましょう。
5-2.RPAツールを導入する
RPAツールを導入している企業も少なくありません。
RPAツールとは「Robotic Process Automation」の略称であり、業務の一部をコンピューターによって自動化するツールのことです。
業務を自動化することで、業務の効率化はもちろん、業務クオリティの向上やコスト削減にもつながります。
RPAツールは種類が豊富にあるので、それぞれの性能や料金などを比較検討した上で選びましょう。
>>業務自動化を目指すおすすめのツールやシステム7選!
>>業務自動化に伴うRPAとは?種類や導入するメリット・導入手順についてご紹介!
5-3.リモートワークを推進する
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、リモートワークを推進している企業も増えてきています。
リモートワークによって従業員は集中できる場所で働けるため、生産性の向上が期待できます。
また、オフィスに出社する必要がなくなるので、通勤費用や光熱費などのコスト削減にもなるのです。
5-4.データを一元管理できるシステムを導入する
データをバラバラに管理してしまうと、必要なデータを取り出すときにどこにあるのかが分からなくなってしまい、時間がかかります。
しかし、一元管理できるシステムを導入することでスムーズにデータが見つけ出せるようになり、作業時間の短縮につながるのです。
もちろん、システムを導入する際には費用がかかるので、あらかじめ予算を確保しておきましょう。
5-5.オフィス家具にこだわる
オフィスのデスクが小さかったり椅子が座りづらかったりすると、ストレスや疲労が蓄積する要因にもなってしまいます。
そのため、以下のように機能性を重視したオフィス家具の設置を心がけてみましょう。
- 昇降機能が搭載されているデスク
- 前傾や後傾などすべての姿勢に対応している椅子
- 座面のクッション性能が高く、長時間座っていても疲労が蓄積しない椅子
オフィス家具にこだわることで従業員の集中力が向上し、業務の効率化につながります。
5-6.マニュアルを作成する
同じ業務内容であっても、担当する従業員によってやり方が違うと、ミスが発生したり作業時間に大きな違いがあったりするケースも少なくありません。
しかし、マニュアルを作成することで全員が同じ方法で業務を遂行できるようになるため、業務クオリティや作業時間の均一化が図れます。
また、属人化を防止することも可能です。
マニュアルは誰が見ても理解できるよう、図や画像を用いて丁寧に作成しましょう。
5-7.アウトソーシングを利用する
自社だけですべての業務を遂行するのが難しいと感じたら、アウトソーシングを利用してみましょう。
アウトソーシングとは、自社の業務の一部を外部に委託することです。
アウトソーシングを利用することで、コストの削減や売り上げに直結するようなコア業務に専念できるようになります。
これまでの実績や対応してくれる業務範囲などを比較した上でアウトソーシング会社を選びましょう。
5-8.コンサルタントを活用する
業務の効率化は、専門的なスキルや知識がなくても実施できます。
しかし、判断を誤ってしまうと失敗する可能性が高くなるので、自社だけで実施できるか不安に感じる担当者も多いはずです。
そんなときには、コンサルタントを活用してみましょう。
コンサルタントは専門的なスキルや知識を有しているので、的確なアドバイスによってスムーズに業務を効率化できるようになります。
成功確率も格段に向上するのでおすすめです。
5-9.ペーパーレス化を進める
現在では、多くの企業でペーパーレス化を進めています。
ペーパーレス化によって、紙代や印刷にかかるインク代などを削減できます。
また、情報の共有がスムーズになり、書類のように紛失するリスクもありません。
そのため、以下の方法を参考にしながら、ペーパーレス化を進めていきましょう。
- すべての請求書を電子化する
- 電子契約に対応するためのシステムを導入する
- 業務専用のタブレット端末を導入する
5-10.デスクレイアウトを変更する
デスクレイアウトを変更するだけでもコミュニケーションの活性化につながり、業務の効率化が期待できます。
デスクレイアウトには以下のようなパターンがあります。
- 対向型レイアウト:同じ部署のメンバーが向かい合わせとなっているレイアウト
- 背面式レイアウト:同じ部署のメンバーが背中合わせの状態となっているレイアウト
- 同向型レイアウト:デスクをすべて同一方向に並べているレイアウト
- ブース型レイアウト:お互いの席をパーテーションで仕切ったり、個人のブース席
を設定したりするレイアウト - クロス型レイアウト:デスクを十字型に配置することで、いつでもメンバーとコミュニケーションが図れるレイアウト
- フリーアドレス型レイアウト:席を固定することなく、自分の好きな場所に移動して業務が行えるレイアウト
上記を参考にしながら、自社に最適なデスクレイアウトを選びましょう。
5-11.業務に優先順位をつける
業務に優先順位をつけることでやるべきことが明確になり、効率的に業務を進められるようになります。
以下の項目に業務を当てはめて、実際に優先順位をつけていきましょう。
- 重要度が高く、緊急性も高い
- 重要度は低いが、緊急性は高い
- 重要度は高いが、緊急性は低い
- 重要度が低く、緊急性も低い
数ある施策のなかでも容易に行えるため、おすすめです。
6.業務を効率化する上での3つの注意点
業務を効率化する上で、以下の3つに注意しましょう。
- 施策は一つに絞らない
- 従業員の意見を考慮する
- 必要な業務は削減しない
順番に解説します。
6-1.施策は一つに絞らない
業務を効率化するにあたって、施策は一つに絞らないようにしましょう。
なぜなら、施策を一つに絞ってしまうと、効果が実感できないときの対処法がなくなってしまうからです。
業務を効率化するための施策は豊富にあるので、一つではなく複数選びましょう。
また、施策を複合することでさらなる効果が期待できます。
6-2.従業員の意見を考慮する
上層部の話し合いのなかで業務を効率化することを決めたとしても、実施するのは現場で働く従業員です。
そのため、従業員のリソースを考えることなく強引に業務の効率化を進めてしまうと、失敗する可能性が高くなります。
また、従業員から不満の声が挙がり、離職する要因にもなりかねません。
そのような事態を防ぐためにも、従業員の意見を考慮した上で業務を効率化するかどうかを判断しましょう。
6-3.必要な業務は削減しない
業務は「必要な業務」と「不要な業務」の2つに分かれています。
業務を効率化する上で削減するのは、あくまでも不要な業務のみです。
誤って必要な業務を削減した場合、逆にコストが増えたり従業員満足度が低下したりする可能性があります。
そのため、自社で業務を効率化できるか不安に感じるのであれば、コンサルタントの活用を検討しましょう。
7.まとめ
本記事では、業務の効率化の具体例やメリット・デメリット・手順などを解説しました。
業務を効率化することで、生産性の向上やコストの削減・優秀な人材の確保などが期待できます。
ただし、業務を効率化するためには従業員の協力が必要不可欠です。
そのため、従業員の意見も考慮した上で業務を効率化することを意識しましょう。
どのような施策で業務を効率化しようか迷っている担当者は、本記事を参考にしてみてください。
>>業務の自動化によるメリットやデメリット・進め方などについて解説!
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