最近では、多くの企業が業務の自動化に注力するようになってきました。
業務の自動化とは、最新のIT技術を駆使することで社内の業務を自動化させる施策のことです。
業務を自動化させる方法の一つとしてRPAがあります。
言葉は聞いたことがあっても、どのような意味なのか理解していない担当者も多いはずです。
そこで本記事では、RPAにおける基本知識やメリット・デメリット・導入する手順などについて解説します。
業務を自動化するにあたってRPAの導入を検討している担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
1.業務の自動化におけるRPAとは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、人間がパソコン上で行う業務を代わりに実施する施策のことです。
ルールエンジンやAI、機械学習などを活用して、業務の代替作業を進めます。
業務を自動化する一つの方法であり、RPAを活用することで請求書の作成や情報収集・データ管理などの業務を代わりに行ってくれるのが特徴です。
その結果、業務効率化やコストの削減などが期待できるため、現在では大手企業を中心に多くの企業で導入されています。
1-1.マクロやAIとの違い
RPAはマクロやAIと勘違いされることも少なくありません。
それぞれの意味は以下の通りです。
- マクロ:プログラミング言語であるVBA(Visual Basic for Applications)を活用することで、複数の操作を必要に応じていつでも呼び出せる機能
- AI:自己学習機能を兼ね備えており、人間のようにデータを記憶することで自己判断が可能な機能
マクロは、プログラミング言語であるVBAを活用することで複雑な作業も自動化できます。
しかし、Excelを中心としたMicrosoftのアプリケーション内でしか活用できないので、注意が必要です。
一方のRPAは、パソコン上で行う業務であれば自動化できるので、対象となる業務範囲が異なります。
なおAIとRPAの大きな違いは、自動化できる業務の難易度です。
AIの場合、自己学習機能を兼ね備えているので、蓄積したデータを基に自ら判断を下せます。
それに比べてRPAは AIのように自己学習機能が備わっていないので、基本的に指示した業務しか行えません。
ただし、最近ではAIが組み込まれている高度なRPAツールも増えてきているので、利便性が高まってきています。
1-2.現代においてRPAが求められる理由
現代においてRPAが求められるようになった最大の理由は、少子高齢化による労働人口の減少です。
経済産業省が発表した「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」によると、2050年には日本の人口が約1億人まで減少すると公表されています。
その結果、生産年齢人口の減少が加速していくため、多くの企業でこれまでのような業務フローや業務内容が成り立たなくなるのです。
そのような状況から脱却するためにも、業務の自動化を検討する企業が増えてきました。
業務を自動化する方法の一つとして、費用対効果が高いRPAが注目を集めているのです。
業務の自動化によるメリットやデメリット・進め方などについて解説!
2.RPAにおける3つのクラス
RPAは、対象となる業務範囲や業務難易度に応じて以下の3つのクラスに分かれています。
- クラス1:RPA
- クラス2:ERA
- クラス3:CA
一つずつ解説します。
2-1.RPA
クラス1のRPAは、データの入力作業や書類の作成など、あらかじめ指示された業務内容のみを自動化します。
例えば、Excelに登録されている従業員の勤怠情報を、勤怠管理システムに自動転記するなどです。
このような自動化は、複数のデータベースなどを横断的に操作する必要があるため、Excelのマクロでは対応できません。
定型業務の自動化は、RPAのクラス1で実現できます。なお、バグやエラーなどが発生した場合には、自動化がストップしてしまうリスクも存在します。
RPA担当者が修正まで対応できる場合は別ですが、そうでない場合はトラブル解消のために時間を要することになるでしょう。
2-2.ERA
クラス2のERAは「Enhanced Process Automation」の略称であり、AIが搭載されています。
AIによって蓄積したデータを基に一部の業務であれば、あらかじめ指示されていなくても自動化が可能です。
クラス1では定型業務の自動化が基本ですが、クラス2では非定型業務においても一部自動化を達成でき、企業のフロント業務効率化にもつながるでしょう。
ERAを導入することで、あらかじめ設定したルールに基づいて、ユーザーの問い合わせに対応するなど幅広い活躍が期待されます。
2-3.CA
クラス3のCAは「Cognitive Automation」の略称であり、幅広い業務をAIによって自らデータを分析し、意思決定までのプロセスに対応可能です。
そのため、より高度な業務まで自動化できます。
現時点においては、CAの実装はこれからという状況ですが、今後AI技術の普及により加速度的に導入企業が増加するでしょう。
3.RPAが行える3つの業務
RPAが行える主な業務は以下の3つです。
- 書類作成業務
- 情報収集・管理業務
- 配信・顧客対応業務
順番に解説します。
3-1.書類作成業務
あらかじめテンプレート化されている書類であれば、RPAを活用することによって自動で作成できます。
また、データを照らし合わせることで、ミスや漏れがないかを確認することも可能です。
3-2.情報収集・管理業務
RPAでは、インターネット上で必要な情報を自動的に収集したり、顧客情報を一元管理したりすることも可能です。
そのため、在庫管理や競合他社のリサーチなど、さまざまな業務において効率化が図れます。
3-3.配信・顧客対応業務
あらかじめ文言が決まっているメールであれば、時間に合わせて自動で配信できます。
また、顧客から電話がかかってきた場合には、電話番号と紐づいたデータが自動で表示する仕組みを構築することも可能です。
4.RPAツールは全部で3種類
数多くのRPAツールが開発されていますが、大きく3種類に分けられます。
- サーバー型
- デスクトップ型
- クラウド型
それぞれの特徴を順番に解説します。
4-1.サーバー型
サーバー型は、サーバー上で利用できるRPAです。
サーバー上にRPAの環境を構築することで、例えばパソコン1台につき100体以上のロボットを働かせることができるため、業務を横断したデータの一括管理が可能です。
また、自社サーバーにRPAを構築するため、セキュリティレベルを高く維持できます。
大量の業務を自動化したい大手企業におすすめです。
ただし、サーバー上にRPAの環境を構築するため、デスクトップ型やクラウド型と比較して初期費用や運用コストが非常に高くなります。
そのため、予算に余裕がない場合には注意が必要です。
4-2.デスクトップ型
デスクトップ型は、パソコンにソフトをインストールするだけで利用できるRPAです。
月額料金も安く、初心者でも容易に操作できるような仕様となっています。
パソコンごとに自動化できるので、従業員ごとに管理しやすく、スモールスタートしたい場合におすすめです。
ただし、サーバー型やクラウド型よりも属人化しやすい傾向にあるため、従業員同士でお互いの情報を定期的に共有しておきましょう。
4-3.クラウド型
クラウド型は、クラウドサーバー上で利用できるRPAです。
自社でサーバー環境を整えたり、ソフトをインストールしたりする必要もないので、導入するまでのハードルが低いのがメリットです。
また、自動でアップデートが行われるため、保守・運用の手間がかかりません。
しかし、クラウド型を利用する際にはインターネットに接続する必要があるので、セキュリティ面には十分に気をつけてプロダクトの選定を検討しましょう。
5.RPAを導入するメリット
業務の自動化においてRPAを導入するメリットは以下の4つです。
- 業務クオリティの向上につながる
- コストの削減が期待できる
- 業務の効率化が図れる
- コア業務に注力できる
一つずつ解説します。
5-1.業務クオリティの向上につながる
これまでの業務は従業員が手作業で行っていたため、ヒューマンエラーが発生することも珍しくありませんでした。
しかし、RPAを導入することで、業務の一部を自動化できます。
その結果、従業員が介入することもなくなるため、ヒューマンエラーが起きにくくなり、業務クオリティの向上につながるのです。
5-2.コストの削減が期待できる
業務量が多いため、残業代や外注費用などの支出が大きい企業も少なくありません。
RPAを導入することで初期費用やランニングコストなどが発生しますが、業務の自動化によって従業員一人ひとりの業務量を減らせます。
その結果、残業時間が削減されて外注する必要もなくなるため、トータルコストの削減が期待できるのです。
5-3.業務の効率化が図れる
これまで従業員が行っていた業務もRPAの導入によって自動化できます。
従業員が行うよりも処理速度が速く、その分のリソースを別の業務に充てられるので、業務の効率化が図れるのです。
5-4.コア業務に注力できる
業務は「コア業務」と「ノンコア業務」の2つに分けられます。
- コア業務:専門的な知識やスキルが必要で難易度が高く、利益に直結する業務
- ノンコア業務:専門的な知識やスキルが必要ないため難易度が低く、直接的な利益には結びつかない業務
請求書の作成やデータ管理などのノンコア業務に時間を取られてしまい、コア業務にリソースを割けずに困っている従業員も少なくありません。
しかし、RPAの導入によってノンコア業務を自動化することで、コア業務に注力できるようになるのです。
6.RPAを導入するデメリット
RPAはメリットだけでなくデメリットもあります。
主なデメリットは以下の3つです。
- 自動化できない業務もある
- エラーによって業務がストップする可能性がある
- 情報漏えいリスクがある
順番に解説します。
6-1.自動化できない業務もある
RPAは、AIのように自己学習機能を兼ね備えているわけではないので、書類の作成やデータ管理のようなノンコア業務のみ自動化できます。
基本的に判断が必要な業務は自動化できないので注意が必要です。
ただし、最近ではAIを搭載したRPAツールも続々とリリースされています。
そのため、難易度の高い業務も自動化したいのであれば、AIが搭載されているRPAツールの導入を検討しましょう。
6-2.エラーによって業務がストップする可能性がある
何かしらのエラーが発生することで、RPAが停止する恐れがあります。
軽微なエラーであれば自社で対処できますが、復旧するまで時間がかかる場合には、業務そのものがストップしてしまいます。
その結果、企業にとって大きな損害となる可能性があるのです。
被害を最小限に抑えるためにも、定期的なチェックやエラーが発生した場合でもすぐに対応できるようなマニュアルを作成しておくなどの対策を講じておきましょう。
6-3.情報漏えいリスクがある
RPAを活用するにあたって不正アクセスされたり、ウイルスが侵入したりする恐れがあります。
その結果、企業の機密情報や顧客情報などが漏えいしてしまい、ユーザーやクライアントから信用を失う可能性があるのです。
特にクラウド型の場合はインターネットに接続しなければいけないので、サーバー型やデスクトップ型と比較してリスクが伴います。
そのため、なるべくセキュリティに配慮されたRPAツールを導入するようにしましょう。
7.RPAを導入する7つの手順
業務の自動化に伴い、RPAは以下の7つの手順で導入できます。
- 業務内容や業務プロセスなどを見直す
- RPAを導入するにあたって自動化する業務を決める
- 導入するRPAツールを決める
- スモールスタートでRPAを導入する
- スモールスタートの内容を基に分析・改善する
- 本格的にRPAを導入する
- PDCAを回して改善する
順番に解説します。
7-1.業務内容や業務プロセスなどを見直す
既存の業務内容や業務プロセスなどを見直して現状を把握することで、自分たちの問題点を洗い出します。
その後、「RPAを導入してどのようになりたいのか」明確な目標を定めましょう。
7-2.RPAを導入するにあたって自動化する業務を決める
RPAを導入するにあたって自動化したい業務を決めます。
導入するRPAツールの性能や機能によっても異なりますが、自動化できる業務は限られているので、注意が必要です。
自動化したい業務が多い場合には、優先度が高い業務から順番に選びましょう。
7-3.導入するRPAツールを決める
自動化したい業務が決まったら、導入するRPAツールを選定します。
RPAツールによって、導入コストや性能・サポート内容などが大きく異なります。
そのため、それぞれの特徴を把握した上で自社に合ったRPAツールを選びましょう。
7-4.スモールスタートでRPAを導入する
実際にRPAを導入します。
最初から対象となるすべての業務にRPAを導入してしまうと、従業員の負担が大きくなります。
その結果、RPAをうまく活用できず失敗する可能性が高くなるので、必ずスモールスタートしましょう。
7-5.スモールスタートの内容を基に分析・改善する
スモールスタートした内容を基に、問題点を洗い出して分析・改善します。
万全の状態でRPAを導入するためにも、この段階で不安な点がある場合には、解消しておきましょう。
7-6.本格的にRPAを導入する
本格的にRPAを導入します。
スモールスタートのときと違って対象となる業務範囲も広いので、新たな問題点が見つかる可能性があります。
従業員同士で連携を図りながら、慎重に対応していきましょう。
事前にマニュアルを作成しておくと、スムーズに進められます。
7-7.PDCAを回して改善する
RPAを導入しても、業務クオリティの向上やコストの削減などにつながらなければ意味がありません。
RPAの効果を最大限に発揮して自分たちの目標を達成するためにも、定期的にPDCAを回すことが大切です。
8.RPAを導入するにあたっての注意点
RPAを導入するにあたって以下の3つに注意しましょう。
- 適切な業務範囲を設定する
- 導入支援を受ける
- 運用体制を構築しておく
一つずつ解説します。
8-1.適切な業務範囲を設定する
AIを搭載したRPAツールを導入した場合、判断が必要な業務も自動化できるため、大幅な業務量の削減が期待できます。
ただし、RPAツールに業務を任せきりにしてしまうと、業務のブラックボックス化が発生したりエラーやトラブルによって業務が停止したりする恐れもあるので注意が必要です。
万が一のことも考えた上で、業務の自動化に伴う適切な業務範囲を設定しましょう。
8-2.導入支援を受ける
導入方法が複雑だったり、操作方法が難しかったりするRPAツールも珍しくありません。
その結果、導入するまでに時間がかかってしまうので、可能であれば導入支援を受けましょう。
導入支援を受けることでRPAツールの導入をサポートしてくれるだけでなく、ツールの効果的な活用方法やおすすめの機能なども教えてくれるので、効率的な業務の自動化につながります。
8-3.運用体制を構築しておく
高性能なRPAツールを導入しても、運用体制が整っていなければ最大限に効果を引き出すことはできません。
そのため、RPAツールを導入するにあたって担当者を選定したり、RPAに詳しい人材を雇用したりするなど、運用体制を構築しておきましょう。
9.おすすめのRPAツール3選
数多くのRPAツールがあるので、どれを選べばいいのか迷ってしまう担当者も多いはずです。
おすすめのRPAツールは以下の3つです。
- RoboTANGO|スターティアレイズ株式会社
- AUTORO|オートロ株式会社
- WinActor|NTTアドバンステクノロジ株式会社
順番に解説します。
9-1.RoboTANGO|スターティアレイズ株式会社
スターティアレイズ株式会社が提供しているRoboTANGOは、1つのライセンスを複数のパソコンで利用できるRPAツールです。
パソコン上の操作をそのまま録画することで、容易にロボットを作成することが可能です。
サポート専用のページがあるので、操作方法や機能などで分からないことがあっても容易に調べられます。
利用料金も月額5万円と非常にリーズナブルであり、最低利用期間1ヵ月から始められるため、コストを抑えてRPAツールを導入したい企業におすすめです。
9-2.AUTORO|オートロ株式会社
オートロ株式会社が提供しているAUTOROは、誰でも簡単に操作できるクラウド型のRPAツールです。
視覚的で分かりやすさを追求した操作画面となっており、クラウド上の業務をまとめて自動化できます。
料金プランとサポートプランの2つに分かれていて、合計5種類のなかから選べるので、自社の予算に合わせて導入することが可能です。
9-3.WinActor|NTTアドバンステクノロジ株式会社
NTTアドバンステクノロジ株式会社が提供しているWinActorは、DX化を進めている7,500社以上の企業が導入しているRPAツールです。
日本語対応で直感的に操作しやすいような仕様となっているため、さまざまな業界でも重宝されています。
連携できる製品やサービスも豊富にあるので、余計な工数が発生することなく、導入してからすぐに活用できます。
10.まとめ
本記事では、RPAにおける基本知識やメリット・デメリット・導入する手順などについて解説しました。
RPAを導入することで、業務クオリティの向上や業務の効率化などが期待できます。
RPAは3つのクラスに分かれており、サーバー型やデスクトップ型・クラウド型などがあるので、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。
本記事を参考に、業務を自動化する際にはRPAの導入を検討してみてください。
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