業務の効率化において目標を設定することで、従業員のモチベーションを維持したり、成功するまでのプロセスを可視化したりすることが可能です。そこで本記事では、業務の効率化で目標を設定するまでの手順や目標を達成するための施策などについて解説します。
1.業務の効率化とは?BPRとの関係性について
業務の効率化とは、業務全般における「ムリ・ムダ・ムラ」を省いて効率的に業務を行うことです。
ムリ・ムダ・ムラの具体的な一例は以下の通りです。
- ムリ:就業時間内に終わらせることが不可能な業務量を強いられている
- ムダ:非効率的な業務方法によって常に残業が発生している
- ムラ:業務が属人化しており、従業員によって業務クオリティが大きく異なる
上記のような問題も業務を効率化することで、解消できます。
また、業務の効率化と密接な関係にあるのがBPRです。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フローなどを根本的に見直す施策のことです。
1990年代のアメリカにおいて、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2名が不況から脱却するための施策として提唱しました。
業務の効率化は、BPRの一環として行われることも少なくありません。そのため、BPRの視点も意識しながら業務の効率化を実施しましょう。
BPRについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!
2.業務の効率化で目標設定が重要な2つの理由
業務を効率化する上で、目標設定が重要な理由は以下の2つです。
- 従業員のモチベーションを維持する
- 成功するまでのプロセスを可視化する
一つずつ解説します。
2-1.従業員のモチベーションを維持する
業務を効率化する上で、従業員の協力が必要不可欠です。
しかし、目標が設定されていないと、従業員は業務を効率化するために何をすればいいのかが分からなくなります。
その結果、従業員のモチベーションが徐々に低下してしまうのです。
従業員のモチベーションを維持するためにも、目標を設定することが重要です。
2-2.成功するまでのプロセスを可視化する
目標が設定されていなければ、業務の効率化を行っても方向性がブレてしまい、失敗につながる可能性が高くなります。
業務の効率化を成功させるまでのプロセスを可視化するためにも、目標設定が必要になってくるのです。
3.業務の効率化において目標設定するまでの手順
業務の効率化における目標設定は、以下の3つの手順で行います。
- 既存の業務内容をすべて洗い出す
- 業務における問題や課題を見つける
- 明確な目標を設定して業務の効率化を行う
順番に解説します。
3-1.既存の業務内容をすべて洗い出す
業務の効率化において目標を設定するためには、現状を把握しなければいけません。
そのため、まずは既存の業務内容をすべて洗い出します。
3-2.業務における問題や課題を見つける
洗い出した既存の業務内容のなかから、問題や課題を見つけていきます。
上層部よりも実際に現場で働いている従業員が一番把握しているはずです。
そのため、従業員の意見を参考にした上で問題や課題をピックアップしていきましょう。
なお、業務における問題や課題を見つけるためには、以下の視点も参考に抽出してみてください。
・業務そのものが属人的ではないか
・業務に配置する人員は適切か
・業務フローは明確であるか
・特定の業務にのみ工数が増加していないか
・業務マニュアルは用意されているか
・業務に使用するツールは十分に活用されているか
・従業員のスキルは不足していないか
3-3.明確な目標を設定して業務の効率化を行う
ピックアップされた問題や課題から目標を設定していきます。
抽象的な目標を設定してしまうと、従業員はどのようなアクションを起こせばいいのか分からなくなります。
そのため、なるべく数値を用いた具体的な目標を設定しましょう。
例えば、従業員のスキル不足が原因で業務の工数が増大し、業務効率化を阻害していると仮定します。
この場合、「従業員にどのようなスキルを習得させればよいか」もしくは「いつまでに習得させる必要があるのか」など、目標を具体的に設定するのです。
業務工数の削減を例に目標の設定方法について見ていきましょう。
【業務効率化における目標設定例】
目標 | 5月までに業務工数の20%を削減する |
方針 | アウトソーシングは活用せず、プロジェクトメンバーだけで上記を達成する |
KPI | 不必要な業務を10%削減コミュニケーションコストを10%削減 |
手段 | 業務の見直しタスク管理ツールの導入(ペーパーレス化を進める)コミュニケーションツールの導入 |
評価 | 5段階評価 |
上記はあくまで例のため抽象的ですが、本来はKPIをさらに細かく分析し、手段と行動に落とし込みます。
目標を確実に達成するためにも、KPIツリーなどを活用して進めていきましょう。
ゴールを達成するまでの行動が明確になるので、従業員を混乱させずに済みます。
4.業務の効率化を実施する上で設定する目標例4選
業務の効率化を実施する上で、目標を設定する手順を理解しても、どのような目標を設定すればいいのか分からないという担当者も多いはずです。
業務の効率化で目標となる例を4つご紹介します。
- 利益を増加させる
- 顧客満足度を向上させる
- 残業時間を減らす
- 従業員のモチベーションを向上させる
順番に見ていきましょう。
4-1.利益を増加させる
業務を効率化することで、これまでとは同じ業務内容や業務量であっても、大幅な時間短縮につながります。
その結果、余剰分のリソースをほかの業務や新規事業に充てられるため、利益の増加を目標に設定している企業も少なくありません。
4-2.顧客満足度を向上させる
業務を効率化することで利益の増加が期待できます。
増加した利益の一部を商品やサービスの開発資金に充てることで、クオリティの向上につながり、顧客満足度を向上させることができるのです。
そのため、顧客満足度の向上を目標にして業務の効率化を行う企業も多くあります。
4-3.残業時間を減らす
人手不足が続いているのにもかかわらず、業務量は変わらないため、残業が常態化している企業も数多くあります。
しかし、業務の効率化に伴いツールを導入したり、マニュアルを作成したりすることで業務時間の短縮につながり、残業時間を大幅に減らせます。
また、プライベートの時間も確保でき働きやすい環境となるため、離職率の改善にも期待ができるのです。
4-4.従業員のモチベーションを向上させる
企業は従業員によって成り立っているため、業務に対する従業員のモチベーションが低ければ、経営状況の悪化につながります。
そのため、業務を効率化するにあたって、従業員のモチベーション向上を目標にする企業も多いはずです。
業務を効率化することで、利益の増加が期待できます。
増加した利益の一部を給与に反映することによって、従業員はこれまで以上に意欲的に業務へ取り組むようになり、モチベーションを向上させることが可能です。
5.業務の効率化で目標設定する際の3つの注意点
業務の効率化において目標設定する際には、以下の3つに注意しましょう。
- 現実的ではない目標は設定しない
- 期限を設ける
- 小さな目標もいくつか設定する
一つずつ解説します。
5-1.現実的ではない目標は設定しない
業務を効率化するにあたって現実的ではない目標を設定してしまうと、従業員のモチベーション低下につながります。
目標はあくまでも達成するために掲げます。そのため、しっかりと現状を把握した上で現実的な目標を設定しましょう。
5-2.期限を設ける
業務の効率化において、目標設定と共に期限を設けましょう。
なぜなら、期限を設けないと業務を効率化するための施策が後回しにされてしまい、従業員の意識が徐々に低下する恐れがあるからです。
業務の効率化を成功させたいのであれば、メリハリをつけることが大切です。
5-3.小さな目標もいくつか設定する
業務の効率化を実施しても、効果が実感できるまで時間がかかるため、目標を達成するまでに途中で挫折してしまうことも珍しくありません。
従業員のモチベーションを最後まで維持して業務の効率化を成功させるためにも、最終的な目標だけでなく、その過程における小さな目標もいくつか設定しましょう。
小さな目標を設定する際は、KPIツリーを活用するのがおすすめです。
6.業務の効率化で目標を達成するための施策7選
業務の効率化で設定した目標を達成するための施策として、以下の7つがあります。
- リモートワークやフレックスタイム制を導入する
- コミュニケーションが活発化するような環境を整備する
- アウトソーシングを活用する
- 業務マニュアルを作成する
- 一部の業務を自動化させる
- ペーパーレス化を推進する
- 時短となるスキルやテクニックを習得する
順番に解説します。
6-1.リモートワークやフレックスタイム制を導入する
働き方改革関連法の施行や新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、働き方も多様化してきています。
従業員によって働きやすい環境はそれぞれ異なるので、リモートワークやフレックスタイム制を導入することで生産性が向上し、業務の効率化が期待できるはずです。
6-2.コミュニケーションが活発化するような環境を整備する
従業員同士でコミュニケーションを図ることで情報の共有がスムーズになり、作業効率が上がります。
そのため、コミュニケーションが活発化するような環境を整備するのも、業務の効率化における施策の一つです。
コミュニケーションの活発化を目的としたツールも豊富にあるので、積極的に導入を検討してみましょう。
6-3.アウトソーシングを活用する
業務を効率化するために、アウトソーシングを活用している企業も少なくありません。
アウトソーシングとは、業務の一部を外部に委託することです。
アウトソーシングを活用することで、業務の効率化はもちろん、業務クオリティの向上やコストの削減などが期待できます。
また、専門的なスキルやノウハウが必要とされる業務を委託したいのであれば、BPO(Business Process Outsourcing)の活用も検討しましょう。
>>BPRとBPOの違いとは?実施方法やおすすめの手法などについても解説!
6-4.業務マニュアルを作成する
業務の属人化が課題となっている企業も数多くあります。
業務の属人化とは、ある業務に対して特定の従業員のみしか把握していない状況のことです。
業務が属人化することで、問題やトラブルが発生しても気づかなくなってしまい、特定の従業員が退職や休職した際には、業務そのものがストップするリスクもあります。
しかし、業務マニュアルを作成することで不要な業務が削減されて業務の標準化につながるため、属人化の解消が期待できるのです。
業務マニュアルを作成する際には、分かりやすいようにグラフや画像などを用いましょう。
6-5.一部の業務を自動化させる
一部の業務を自動化することで、大幅な業務の効率化となります。
業務を自動化させる上でおすすめなのが、RPAツールです。
RPAツールとは「Robotic Process Automation」の略称であり、一部の業務をコンピューターによって自動化できるツールのことです。
RPAツールを導入することで、ヒューマンエラーの防止や生産性の向上につながります。
最近では、AIを搭載したRPAツールも開発されているので、さらに多くの業務を自動化させることが可能です。
>>業務の自動化によるメリットやデメリット・進め方などについて解説!
>>業務自動化に伴うRPAとは?種類や導入するメリット・導入手順についてご紹介!
6-6.ペーパーレス化を推進する
業務を効率化させるための施策として、ペーパーレス化を推進するのもおすすめです。
これまでは書類で情報を共有していましたが、ペーパーレス化を推進することで、すべての情報をオンライン上でスピーディーに共有できます。
また、紙代や印刷代などもかからず、情報を保管するスペースも必要ないので、コストの削減にもつながるのです。
6-7.時短となるスキルやテクニックを習得する
ショートカットキーを使いこなせるようになったり、ブラインドタッチができるようになったりするだけで作業スピードが向上し、業務の効率化につながります。
これらのスキルやテクニックはコストがかからず誰でも習得できるので、従業員一人ひとりに意識させてみましょう。
7.まとめ
本記事では、業務の効率化において目標設定が重要な理由や設定するまでの手順・目標を達成するための施策などについて解説しました。
業務の効率化を実施する上で従業員のモチベーションを維持したり、成功するまでのプロセスを可視化したりするためにも、目標設定は欠かせません。
本記事を参考に、自社に合った目標を設定しましょう。