オフィスの業務効率化により、コストの削減や生産性の向上・離職率の低下などが期待できます。
しかし、どのような方法で実施すればいいのか分からないという担当者も多いはずです。
そこで本記事では、オフィスの業務効率化を実現する具体的な方法や進め方などについて解説します。
1.オフィスの業務効率化が必要な3つの要因
オフィスの業務効率化が必要な要因として、以下の3つが挙げられます。
- 生産性
- 人材不足
- 従業員の健康問題
順番に解説します。
1-1.生産性
環境によって、従業員一人ひとりの生産性は大きく変化します。
特に、これまでテレワークによって自分の集中できる環境で業務を行っていた場合、オフィスへの出社に切り替わることでストレスだと感じてしまうことも珍しくありません。
その結果、生産性が低下する原因にもなります。そのような事態を防ぐためにも、オフィスの業務効率化が必要です。
1-2.人材不足
少子高齢化による労働人口の減少や、終身雇用制度の崩壊に伴う人材の流動化によって、企業は人材を確保するのがさらに困難な状況となっています。
人材不足であってもこれまで通りの業務量をこなさなければいけないので、オフィスの業務効率化が求められるのです。また、オフィスの業務効率化だけでなく、BPRを実施する企業も増えてきています。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フローなどを根本的に見直す施策のことです。
元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2名が提唱した施策であり、1993年の「リエンジニアリング革命」によって日本でも一時期話題となりました。
BPRの一環として、オフィスの業務効率化を実施するケースも見受けられます。そのため、BPRの視点も意識して、オフィスの効率化を検討するとよいでしょう。
BPRについて詳しく知りたい担当者は、以下の記事をご覧ください。
>>BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!
1-3.従業員の健康問題
政府は、2019年4月1日より「働き方改革関連法」を施行しましたが、現在でも多くの企業で長時間労働が常態化しています。
長時間労働によって体調を崩し、休職や退職に追い込まれてしまう従業員も少なくありません。その結果、既存の従業員の負担がさらに大きくなるという悪循環が発生してしまいます。
このような状況を打破するためにも、オフィスの業務効率化が重要になっているのです。
2.業務効率化を行う上で改善が必要なオフィスの特徴6選
オフィスの業務効率化を行う上で、オフィス環境を整える必要があります。
以下の6つに該当するオフィスは改善が必要です。
- 周囲の音がうるさい
- 周囲が静かすぎる
- 残業するのが当たり前になっている
- 整理整頓されていない
- 休憩できるスペースが確保されていない
- 照明の照度や色味について意識できていない
一つずつ解説します。
2-1.周囲の音がうるさい
従業員同士の会話や電話でのお客様対応・キーボード音など、周囲の音がうるさくて業務に集中できないという従業員も少なくありません。
業務効率が大幅に低下する要因となるので、集中できるスペースを設けるなど対策を講じる必要があります。
2-2.周囲が静かすぎる
周囲の音がうるさいのも改善しなければいけませんが、逆に周囲が静かすぎるのも問題です。
周囲が静かすぎると物音を立ててはいけないという緊張感が高まるため、多くの従業員はストレスに感じてしまい、体調不良につながる可能性があります。
働きやすいオフィスにするためにも、普段からBGMを流したり従業員同士が積極的にコミュニケーションを図れたりするような環境構築を心がけましょう。
余談ですがチャットをはじめとしたコミュニケーションツールが普及し、部署内で同僚や上司と話す機会が減少しています。
「隣にいる社員に直接声をかけるのではなく、チャットで連絡している」このような声も聞かれているほどです。
チャットによって利便性が高まる反面、対面でのコミュニケーションに支障が出てしまっては意味がありません。社員同士で過ごしやすい環境を構築できるよう、意識的な取り組みが必要です。
2-3.残業するのが当たり前になっている
業種や業態によっても業務量は大きく異なりますが、残業するのが当たり前になっている企業は要注意です。
長時間労働が常態化すると、疲労が蓄積して従業員の健康に支障をきたす恐れがあります。
また、従業員から不満の声が挙がってしまい、帰属意識の低下や離職率の増加につながる可能性があるので、早急に改善しましょう。
2-4.整理整頓されていない
机の上や共有部分などが書類や物で散乱しており、整理整頓がされていないようなオフィスは、必要な情報を探す際に時間がかかります。
作業効率の低下につながりストレスもたまってしまうので、仕事に対する従業員のモチベーションを下げる要因にもなるはずです。
レガシーシステムによって紙ベースでの管理が中心の企業は、ITツールの活用を検討し、資料をWeb上で共有するなど、労働環境の整備に注力しましょう。
このような取り組みだけでも、整理整頓しやすい環境が構築できるはずです。
2-5.休憩できるスペースが確保されていない
業務を効率的に行う上で重要なのがメリハリをつけることです。
そのため、休憩できるスペースが確保されていないとオンオフの切り替えがうまくできなくなります。
その結果、集中力の低下や疲労の蓄積につながってしまうケースも見受けられます。
2-6.照明の照度や色味について意識できていない
従業員が集中して業務に取り組むためには照度や色味について検討する必要があります。
照度とは「ルクス(lx)」とも呼ばれ明るさを表す単位のことです。設置した照明によって、机や床など照らされる面にどの程度光が到達しているのかを示しています。
オフィスをはじめとした労働環境においては令和3年12月1日に「労働安全衛生規則」について一部見直しが行われました。
これにより、照度の不足による眼球疲労など健康被害を防ぐため、以下の取り決めがなされています。
作業の区分 | 基準 |
一般的な事務作業 | 300ルクス以上 |
付随的な事務作業 | 150ルクス以上 |
付随的な事務作業とは、文字を読んだり、資料を細かく識別したりする必要のない作業のことです。
上記を厳守することは当然ですが、ITやWebなどパソコンを常時使用する業界においては400ルクス以上を確保する必要があるでしょう。
また、照度だけでなく色味についても作業効率に影響を与えます。照明に関わる色味は、大きく分けて次の5つです。
- 電球色
- 温白色
- 白色
- 昼白色
- 昼光色
電球色はオレンジがかった色味を表し、下へ向かうほど青みがかった色味になります。
また、電球色のようなオレンジ色はリラックス効果をもたらし、青みがかった昼光色であれば脳を覚醒させ集中力を持続させる心理的作用があると言われています。
つまり、オフィスの効率化を意識するためにはデスクを照らす照明に電球色はふさわしくありません。
改めて照明の色味が適切に設定されているかを確かめてみましょう。
参考:ご存じですか?職場における労働衛生基準が変わりました|厚生労働省
3.オフィスの業務効率化を実現することによる5つのメリット
オフィスの業務効率化を実現することによるメリットは、以下の5つです。
- コストの削減が期待できる
- 生産性の向上につながる
- 従業員のモチベーションが向上する
- 離職率が低下する
- 業務における属人化の防止
順番に解説します。
3-1.コストの削減が期待できる
残業代や消耗品などのコストが大きいため、なるべく費用を抑えたいという企業も多いはずです。
オフィスの業務効率化を実現することで、労働時間が短縮されます。
また、ペーパーレス化を推進することによって、コピー用紙やトナーなどの消耗品も不要となるため、大幅なコスト削減が期待できるのです。
3-2.生産性の向上につながる
オフィスの業務効率化を実現することで、これまで業務に割いていたリソースに余剰が生まれます。
余剰分のリソースを別の業務に充てられるため、生産性の向上につながるのです。
3-3.従業員のモチベーションが向上する
オフィスの業務効率化によって、利益の増加が期待できます。
増加した利益の一部を従業員に還元したり福利厚生を充実させたりすることで、これまで以上に従業員のモチベーションが向上するはずです。
その結果、さらなる相乗効果が生まれます。
3-4.離職率が低下する
長時間労働が原因で退職する従業員も少なくありません。
しかし、オフィスの業務効率化を実現することで業務量が大幅に減り、労働時間の短縮につながります。
ワークライフバランスが改善されるため、これまで以上に働きやすい職場環境となり、離職率の低下につながるのです。
3-5.業務における属人化の防止
業務の属人化に悩まされている企業も少なくありません。
業務の属人化とは、ある業務を特定の従業員しか把握していない状況のことです。
特定の従業員が休職や退職をしてしまうと、業務そのものがストップするリスクがあります。
しかし、オフィスの業務効率化を実施するにあたって、システムやツールを導入します。
その結果、業務の一部を自動化することが可能なため、属人化の防止が期待できるのです。
4.オフィスの業務効率化を実現する具体的な8つの方法
オフィスの業務効率化を実現する具体的な方法として、以下の8つが挙げられます。
- ペーパーレス化を推進する
- RPAツールを導入する
- 休憩スペースを確保する
- 集中できるブースを設置する
- オフィスの移転を検討する
- デスクレイアウトを変更する
- アウトソーシングを活用する
- 機能性を重視したオフィス家具を購入する
一つずつ解説します。
4-1.ペーパーレス化を推進する
データを紙ベースで管理している場合、共有するまでに時間がかかるだけでなく、紛失するリスクもあります。
また、コピー用紙やトナーにコストがかかります。
そのため、ペーパーレス化を推進しましょう。
ペーパーレス化によって、これまでのデータをオンライン上で管理できるようになります。
その結果、データを紛失するリスクを防げるだけでなく、データの共有がスムーズになるため、業務の効率化にもつながるのです。
4-2.RPAツールを導入する
RPAツールの導入もおすすめです。RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、オンライン上で行う作業を自動化してくれるソフトウェアのことです。
RPAツールを導入することで、一部の業務を自動化できます。
さらにAIを搭載したRPAツールであれば、より高度な業務も自動化することが可能です。
>>業務自動化に伴うRPAとは?種類や導入するメリット・導入手順についてご紹介!
4-3.休憩スペースを確保する
長時間作業していると、徐々に集中力が低下します。そのため、業務を行う上でメリハリをつけることが大事です。
休憩スペースを確保することでオンオフの切り替えができるようになるため、生産性が高まります。
なお、休憩スペースを設置する際には、以下の工夫を取り入れてみてください。
・業務スペースとは異なるリラックスした雰囲気を取り入れる
・業務の雑音が気にならない場所に設置する
・座り心地のよいソファや視線を遮るパーテーションを導入する
・コーヒーマシンやお菓子などリラックスできるグッズを導入する
・リラックス効果を意識した間接照明を活用する
・ストレスを軽減するためインテリアグリーンを取り入れる
・ヒーリング効果のあるBGMを流す
4-4.集中できるブースを設置する
周囲の音が気になってしまい、業務に集中できない従業員も少なくありません。
そのような従業員の悩みを解決するためにも、防音機能が搭載された集中できるブースを設置しましょう。
ブースを設置することで、これまで以上に生産性が向上し、業務効率化につながるはずです。
また単に集中ブースを設置するだけでなく「パーテーションなどでゆるやかに仕切る」「ちょっとした物を置けるサイドテーブルを設置する」など、一工夫することで、より快適な空間を演出できます。
4-5.オフィスの移転を検討する
オフィスの業務効率化を実現したいのであれば、オフィスの移転も検討しましょう。
既存のオフィスよりも広いオフィスへ移転することで、休憩スペースや集中できるブースを設置できるようになります。
心機一転、従業員のモチベーションも高まるはずです。
4-6.デスクレイアウトを変更する
デスクレイアウトを変更するだけで業務効率化につながることも珍しくありません。
デスクレイアウトには、以下のようなパターンがあります。
・対向型レイアウト:同じ部署のメンバーが向かい合わせとなっているレイアウト
・背面式レイアウト:メンバー同士が背中合わせの状態となっているレイアウト
・同向型レイアウト:デスクをすべて同じ向きにそろえているレイアウト
・ブース型レイアウト:お互いの席をパーテーションで仕切ったり、個人のブース席を設定したりするレイアウト
・クロス型レイアウト:デスクをクロス状にして、いつでもコミュニケーションが図れるレイアウト
・フリーアドレス型レイアウト:席を固定せず、自分の好きな場所で業務が行えるレイアウト
豊富なパターンがあるので、自分たちが働きやすいデスクレイアウトに変更しましょう。
4-8.機能性を重視したオフィス家具を購入する
業務量が多い場合には、アウトソーシングの活用も検討しましょう。
アウトソーシングとは、業務の一部を外部に委託することです。
また、アウトソーシングの一種であるBPO(Business Process Outsourcing )を活用することで専門の業者に委託できるため、業務の効率化だけでなく業務クオリティの向上にもつながります。
>>BPRとBPOの違いとは?実施方法やおすすめの手法などについても解説!
4-8.機能性を重視したオフィス家具を購入する
オフィスチェアが座りづらいと、疲労が蓄積しやすくなったり腰痛になったりする恐れがあります。
その結果、生産性が低下する要因にもなるので、なるべく機能性を重視したオフィス家具をそろえるようにしましょう。
具体的には、以下を意識して取り入れてみてください。
・エルゴノミクス(人間工学)に基づいたオフィスチェアを選ぶ
・昇降機能付きのデスクを導入する
・オフィスデスクは業務に合わせたサイズを選ぶ
・キャビネット付きのデスクも検討する
・本棚など場所をとる家具は圧迫感の少ないタイプを選ぶ
5.オフィスの業務効率化の進め方
オフィスの業務効率化は、以下4つの手順で進められます。
- オフィスの業務効率化を実施する目的を明確にする
- オフィスの現状を把握する
- 業務効率化を実施する
- PDCAを増しながら改善していく
順番に解説します。
5-1.オフィスの業務効率化を実施する目的を明確にする
オフィスの業務効率化を実施することでさまざまな効果が期待できますが、成功させるためには、従業員の協力が必要不可欠です。
しかし、どのような目的で実施するのかが決まっていないと、従業員は何をすればいいのか混乱してしまいます。
従業員のモチベーションを維持してオフィスの業務効率化を成功させるためにも、まずは目的を明確にしましょう。
5-2.オフィスの現状を把握する
企業によってオフィスの状況はさまざまです。
そのため、業務効率化を実施するにあたって「具体的にどのような部分が改善できるのか」オフィスの現状を把握した上で問題を洗い出しましょう。
5-3.業務効率化を実施する
洗い出したオフィスの問題を改善するための方法を考えたら、業務効率化を実施していきます。
業務効率化の実施方法によっては時間がかかることもあるため、短期的な目標をいくつか設定するのがおすすめです。
5-4.PDCAを回しながら改善していく
オフィスの業務効率化を成功させるためには、PDCAを回すことも欠かせません。
定期的にPDCAを回すことで、より自社に合った効果的な方法が可能となります。
6.まとめ
本記事では、オフィスの業務効率化を実現することによるメリットや方法・進め方、改善すべきオフィスの特徴などについて解説しました。
オフィスの業務効率化を実施することによって、コストの削減や生産性の向上・離職率の低下などが期待できます。
本記事を参考に、オフィスの業務効率化を実現してみましょう。
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