業務を自動化することで、業務の効率化やコストの削減などが期待できます。
しかし、具体的にどうやって業務を自動化すればいいのか分からないという担当者も少なくありません。
また、ほかの企業がどのように業務を自動化しているのか知りたいという担当者も多いはずです。
そこで本記事では、業務を自動化するメリットやデメリット・実際の進め方・成功事例などについてご紹介します。 これから業務の自動化を検討している担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
1.業務の自動化とは?注目されるようになった理由
業務の自動化とは、これまで人間が行っていた業務の一部をIT技術によってシステムやツールを活用することで、自動化させることです。
業務を自動化させることで、従業員のリソースをほかの業務に割けるようになります。
業務の自動化が注目されるようになった主な理由として挙げられるのが、以下の3つです。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 2019年に施行された働き方改革関連法による長時間労働の規制
- BPRの実施
日本では、少子高齢化による労働人口の減少が深刻化してきています。
さらに労働人口が減少してしまうと、多くの企業で人材不足となり、業務が成り立たなくなることが推測されます。
そのような状況を改善するためにも、BPRを実施する企業が増えてきているのです。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フロー・組織の構造など、業務プロセス全体を根本的に見直す施策のことを指します。
1990年代に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサ
ルタントのジェイムス・チャンピー氏の2名が不況を脱却するために提唱したことがきっかけで誕生しました。 BPRを実施するためにも、業務の自動化が欠かせません。
業務の自動化によるメリットやデメリット・進め方などについて解説!
2.業務自動化によるメリット
業務を自動化することによるメリットは、以下の3つです。
- コスト削減が期待できる
- ヒューマンエラーが起きにくくなる
- 業務の効率化につながる
順番に解説します。
2-1.コスト削減が期待できる
人手不足によって従業員の残業時間が多かったり、業務の一部を外注化していたりする企業も少なくありません。
しかし、業務を自動化することでこれまでの業務量を大幅に減らせるため、残業時間の削減につながり、外注する必要もなくなります。
もちろん、業務の自動化に伴いシステムやツールを導入する必要があるため、初期費用がかかりますが、トータルで考えるとコストの削減が期待できるのです。
2-2.ヒューマンエラーが起きにくくなる
どれだけ意識していたとしても、従業員が介入する業務ではヒューマンエラーが発生します。
ヒューマンエラーが原因で、ユーザーからの信頼を損なってしまうことも珍しくありません。
しかし、業務を自動化することでヒューマンエラーが起きにくくなるため、業務クオリティの向上につながるのです。
2-3.業務の効率化につながる
業務は「コア業務」と「ノンコア業務」の2つに分かれています。
- コア業務:専門的な判断が必要となり、利益に直結する重要な業務
- ノンコア業務:専門的な判断は必要なく、直接的に利益は生み出さない業務
データ入力のようなノンコア業務に時間をとられてしまい、コア業務に注力できず困っている従業員も多いはずです。
業務を自動化することで、ノンコア業務に割いていたリソースをコア業務に充てることができるため、業務の効率化が期待できます。
3.業務自動化によるデメリット
業務の自動化は、メリットだけではなくデメリットもあります。
主なデメリットは以下の3つです。
- 自動化した業務がブラックボックス化する恐れがある
- バグやエラーによって業務がストップする可能性がある
- 情報が漏えいするリスクがある
一つずつ解説します。
3-1.自動化した業務がブラックボックス化する恐れがある
業務を自動化してしまうと、従業員が介入しなくなるため、業務のブラックボックス化が発生する恐れがあります。
その結果、バグやエラーが発生した場合に対応できなくなってしまうので、使い方が一目で分かるようなマニュアルを事前に作成したり、定期的に業務をチェックしたりするなどの対策を講じましょう。
3-2.バグやエラーによって業務がストップする可能性がある
業務の自動化はシステムやツールなどを活用するため、バグやエラーのような問題が発生した場合、業務がストップする可能性があります。
軽微なバグやエラーであれば、すぐに対処できるため問題ありません。
しかし、深刻なバグやエラーの場合には復旧するまでに時間がかかってしまい、甚大な損失となる恐れがあるため、万が一に備えて対策を考えておくことが大切です。
3-3.情報が漏えいするリスクがある
業務の自動化によってシステムやツールを活用した際に、不正アクセスやウイルスによって情報が漏えいしてしまうリスクもあります。
その結果、クライアントやユーザーからの信頼を失ってしまい、会社の存続に関わるほどの業績悪化につながる可能性があるので、セキュリティ面も考慮した上でシステムやツールを選びましょう。
4.業務を自動化する3つの方法
業務を自動化するための方法は、以下の3つです。
- RPAツールを導入する
- マクロを活用する
- AIサービスを導入する
一つずつ解説します。
4-1.RPAツールを導入する
RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、PC上で行っている業務をシステムによって自動化する施策のことです。
あらかじめ業務の手順を指示することで、その通りに動いてくれます。
RPAツールを導入することで人的コストを大幅に減らしたり、24時間稼働できたりするなどのメリットがあります。 ただし、AIが組み込まれていないRPAツールを導入する場合には、判断が必要な業務に対応していないので、注意しましょう。
4-2.マクロを活用する
マクロとは、VBA(Visual Basic for Applications)と呼ばれるプログラミング言語によってExcelの操作を自動化する機能のことです。
マクロをうまく活用することで、書類の作成やデータチェックのような時間がかかる事務作業も大幅な時間短縮が可能です。
ただし、マクロを活用するためにはVBAを使ってプログラムを書く必要があります。
そのため、VBAの知識やスキルを習得しなければいけません。
4-3.AIサービスを導入する
AIサービスを導入して業務を自動化する方法もあります。
AIは自己学習機能を備えており、指示がなくても蓄積したデータから自ら判断して行動できるので、さまざまな業務に役立ちます。
しかし、AIを活用するためには膨大なデータ量が必要となるので、導入するまでに時間がかかるのがデメリットです。
5.業務自動化を進めるための7つのステップ
業務の自動化は、以下の7ステップで進められます。
- 業務を自動化する目標を設定する
- 自動化したい対象の業務を決める
- 業務を自動化するための方法を選ぶ
- スモールスタートで業務を自動化してみる
- スモールスタートした結果を基に課題を分析・改善する
- 業務の自動化を本格的に行う
- PDCAを回す
一つずつ解説します。
5-1.業務を自動化する目標を設定する
業務を自動化することでさまざまなメリットが期待できますが、デメリットも存在します。
業務を自動化するためには従業員の協力が必要となってくるので、認識の相違を防ぐためにも、「なぜ業務を自動化したいのか」明確な目標から設定しましょう。
5-2.自動化したい対象の業務を決める
自動化したい業務を選びます。
ただし、自動化するのが難しい業務もあるので、以下の3つを判断基準としましょう。
- データ化することが可能か
- ノンコア業務であるか
- 明確なルールが存在しているか
最初から自動化したい業務の範囲を広く設定してしまうと、従業員の負担が大きくなるので、注意が必要です。
5-3.業務を自動化するための方法を選ぶ
RPA・マクロ・AIの3種類から、業務を自動化するための方法を選びます。
それぞれ特徴が異なるので、自社の状況と比較しながら最適な方法を選択しましょう。
5-4.スモールスタートで業務を自動化してみる
対象とする業務や方法まで決まったら、実際に業務を自動化していきます。
いきなり対象となる業務範囲をすべて自動化してしまうと、従業員のリソースがひっ迫する恐れがあります。
その結果、業務の自動化に失敗する可能性があるので、まずはスモールスタートしていきましょう。
5-5.スモールスタートした結果を基に課題を分析・改善する
スモールスタートした結果を基に、課題を分析します。
複数の課題が見つかった場合には、優先順位を決めてから一つずつ改善していくのがおすすめです。
5-6.業務の自動化を本格的に行う
課題を改善したら、本格的に業務を自動化していきます。
スモールスタートでは発見できなかった新たな課題が見つかることもあるので、慎重に進めていきましょう。
5-7.PDCAを回す
問題点があれば、定期的にPDCAを回して改善します。
PDCAを回しながら、業務の自動化における体制を整えていきましょう。
6.業務自動化による成功事例5選
業務の自動化を成功させた事例を5つご紹介します。
- オザックス株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
- 理光商事株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
- 清水建設株式会社|株式会社日立ソリューションズ
- 福島県会津若松市|地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例
- 福井県永平寺町|地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例
6-1.オザックス株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
紙やフィルム・消耗材などを取り扱っているオザックス株式会社では、取引先へ発行する請求書が月に数万枚にものぼります。
すべて紙の請求書で処理しているため、生産性を高めるためにも、デジタル化を課題としていました。
そこでデータ連携ツールを導入した結果、1年目でデジタル化率50%を達成し、請求書の発行業務や郵送業務などの大幅な削減に成功したのです。
取引先からも「請求書がすぐに届くようになったことで、業務を前倒しで進められるようになった」と、好評の声が届いているそうです。
参考:オザックス株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
6-2.理光商事株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
OA機器やITインフラなどを提供している理光商事株式会社では、システムにおけるさまざまなパッケージを導入していたため、余計な業務負荷がかかっていました。
そこでクラウド連携を可能にするツールを導入した結果、データのやり取りが容易になり、シームレスな連携によって業務の生産性が大幅に向上したのです。
月25時間の工数削減を実現しており、業務クオリティの向上につながっているそうです。
参考:理光商事株式会社|JBアドバンスト・テクノロジー株式会社
6-3.清水建設株式会社|株式会社日立ソリューションズ
大手総合建設会社である清水建設株式会社では、各部門でロボットの開発や稼働を積極的に行っています。
しかし、ロボットを管理する体制が整っておらず、部門間の共通化やライセンスコストが割高になるなど、さまざまな問題を抱えていました。
また、社内に複数のRPAツールが点在していたことで、情報システム部門が効率的なフォロー体制を築くことができない課題も見受けられたそうです。
このような状況を改善するためにRPA業務自動化ソリューションを導入した結果、モニタリングによって一元管理が可能となり、ライセンスコストの低減につながったのです。
今後はRPAツールを活用して、データ作成のような単順作業を15%自動化することを目標にしているとのことです。
6-4.福島県会津若松市|地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例
福島県会津若松市では、土日や夜間でも行政に問い合わせしたい住民に対して、どのような対策を講じるべきかを課題としていました。
そこでAIを活用した自動応答サービスを開発した結果、24時間365日すべてにおいて住民からの問い合わせに対応できるようになり、住民アンケートでは80%以上の割合で好意的な評価が得られました。
簡易的な問い合わせ内容を自動応答サービスに任せることで、職員はほかの業務にリソースを割けるようになり、業務の効率化にもつながっているそうです。
詳しい内容は、「地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例」の2ページに記載されています。
6-5.福井県永平寺町|地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例
福井県永平寺町では、外国人観光客が多く訪れますが、多言語に対応した人材を確保するのが難しく、観光案内所が整備されていませんでした。
そこでさまざまな言語に対応できる「観光案内多言語AIコンシェルジュ」を導入した結果、外国人観光客へのスムーズな対応が可能となりました。
人材を雇用する必要もないので、コストの削減にもつながっているそうです。
今後はさらにシステムを強化していき、外国人観光客の満足度向上を目指しているとのことです。
詳しい内容は、「地方自治体における AI・ロボティクスの活用事例」の6ページをご覧ください。
7.まとめ
本記事では、業務を自動化するメリットやデメリット・実際の進め方・成功事例などについてご紹介しました。
少子高齢化やBPRの実施などによって、現在は多くの企業で業務の自動化を進めています。
業務を自動化することでさまざまなメリットが期待できるので、本記事でご紹介した事例を参考に、業務の自動化を検討してみてください。
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