コストカットとは?種類や得られる効果・実施方法についてご紹介!

業務改善の一環として有力な選択肢の一つであるコストカット。

コストカットを実施することで、圧迫している費用負担を軽減し、経営健全化へとつなげられます。

しかし、コストカットにも実施する手順や優先順位があり、判断を見誤ると従業員への負担が増加し、離職率へ影響をおよぼしかねません。

経営健全化のためのコストカットは、どのように行えばよいのでしょうか。

本記事では、コストカットの基礎知識や実施することで得られる効果・進め方などについて詳しく解説します。

経営に関わる4つのコストやコストダウンとの違いなども網羅的に解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

本記事が経営健全化のためのコストカット施策にお役に立てれば幸いです。

1.コストカットとは?

コストカットとは、不要な費用や経費を削減することです。

企業の利益は、売り上げからコストを差し引いたものです。

つまり、利益を最大化するためには「売り上げをあげる」もしくは「コストを抑える」この2つしか方法がありません。

コストカットは、トップダウンで人件費や採用コストなどかかりすぎている経費を見直し、コストの最適化を進める手法です。

利益率アップや業務の効率化などを目的として、多くの企業で実施されています。

1-1.コストダウンとの違い

コストカットと似ている言葉としてコストダウンがあります。

コストダウンとは、ボトムアップで経費を削減することであり、現場レベルで変動費を見直すなどの経費削減を指す場合が多い傾向です。

一方、コストカットは、経営層主導で固定費を大幅に削減するなどが知られています。

不要な費用や経費を削減するという意味ではコストダウンとコストカットは同じですが、対象範囲や経営層が主導するのか、現場レベルで行うのかが異なりますので、注意が必要です。

また、コストダウンは日本人によって作られた和製英語となります。

海外の人材を雇用しているグローバル企業では、意味が通じない可能性があるので気をつけましょう。

1-2.コストカットとBPRの関係性

BPRの実施に伴い、コストカットを行う企業も少なくありません。

BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フロー・組織の構造などを根本的に見直す施策のことです。

BPRを実施することで、業務の効率化やコストの削減・顧客満足度の向上などが期待できます。

業務内容や業務フローなどにおける問題点を改善する施策の一環として、コストカットが行われるので、BPRとは密接な関係にあるといえます。

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2.企業におけるコストは全部で4種類

企業におけるコストは、主に以下の4種類に分けられます。

  • 人件費
  • 採用コスト
  • オフィスコスト
  • IT機器関連コスト

順番に解説します。

2-1.人件費

人件費とは、企業で働く従業員全般にかかるコストのことです。基本給はもちろん、残業代や休日手当、ボーナス、社宅費用なども人件費に該当します。

人件費については、売り上げに対して総額の人件費の割合を示す「人件費率」で求めることができます。

人件費率 = (人件費総額 ÷ 売り上げ) × 100

企業におけるコストのなかで最も大きな割合を占めているのが特徴です。

なお人件費の詳細は、「現物給与総額」と「現物給与以外」の大きく2種類に分かれており、それぞれの意味は以下の通りです。

  • 現物給与総額:所定内賃金や賞与、一時金などを合計した金額
  • 現物給与以外:現物給与に該当しない金額であり、退職金や法定福利費・人材採用費など

現物給与総額における所定内賃金のなかには、家族手当や営業手当なども含まれます。

また、現物給与以外の具体的な例として、健康保険料や社員旅行・社宅費用などが該当します。

働き方改革に伴い、残業時間の削減や休日出勤制限を推進する企業も増えてきました。

人件費のなかでどこを見直すべきか、優先順位を設定し検討する必要があります。

2-2.採用コスト

採用コストとは、新卒採用や中途採用などによって企業が人材を雇用した際に発生するコストのことです。

内部コストと外部コストの2つに分かれています。

  • 内部コスト:採用担当者の人件費やリファラル採用などによって人材をご紹介した従業員に支払うコスト
  • 外部コスト:求人サイトの掲載費用や合同会社説明会における出展費用・採用動画を制作した際の外注費用などにおけるコスト

採用コストは、人材を雇用するために求人サイトに広告を掲載したり、会社説明会を開催したりすることで発生します。

採用コストの計算方法は以下の通りです。

1人あたりの採用コスト = 採用にかかった総額(内部コストと外部コストの合算) ÷ 採用した人数

つまり、採用にかかった金額が200万円で採用した人数が4人の場合、1人あたりの採用コストは50万円です。

人材を雇用しても早期退職されてしまうと、さらなるコストが追加で発生するため、最近では人材育成に注力する企業も少なくありません。

また、採用コストを少しでも削減するために、自社でオウンドメディアを運営する企業も増えてきました。

2-3.オフィスコスト

オフィスコストとは、オフィスを利用する際に発生するコストのことです。

賃料はもちろん、電気代や水道代などもオフィスコストに含まれており、従業員が多いほどオフィスコストがかかります。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によって、2020年から多くの企業でリモートワークを推進するようになりました。

その結果、働き方の多様化によって、最近ではオフィスを持たずフルリモートワークで業務を行う企業も増えてきています。

2-4.IT機器関連コスト

IT機器関連コストとは、業務で使用しているパソコンやタブレットなどに発生するコストのことです。

最新のパソコンやタブレットを購入する場合、1台10万円以上かかることもあるので、大きな負担となっている企業も少なくありません。

そのため、リースやレンタルに切り替えてコストカットを図るなどの対策を講じている企業も見かけるようになりました。

3.コストカットによる4つの効果

コストカットすることで、4つの効果が期待できます。

  • 増益が期待できる
  • 資金を確保できる
  • 業務の効率化につながる
  • 従業員のモチベーションが向上する

一つずつ解説します。

3-1.増益が期待できる

多くの企業が常に利益の向上を追求しています。企業の利益は、以下の計算式によって算出可能です。

企業の利益 = 売り上げ – コスト

自社の利益を向上させるためには、売り上げを伸ばすだけでなく、コストを下げるという選択肢もあります。

そのため、コストカットによってコストを下げることで、増益が期待できるのです。

3-2.資金を確保できる

地震や津波などの想定できない自然災害によって、経営状況が一気に悪化してしまうことも珍しくありません。

特に日本は地震大国ともいわれるほど地震が頻発している地域のため、万が一に備えた対策を講じる必要があります。

自然災害を一例に解説しましたが、これ以外にも新型コロナウイルス感染症の流行によるリモートワークへの移行費用など、不測の事態をあげればきりがありません。

コストカットしておくことで資金の確保にも充てられるため、不測の事態に備えられます

3-3.業務の効率化につながる

歴史ある企業の場合、古くからの習慣を大切にする文化があるため、余計な業務にリソースを割いているケースも珍しくありません。

しかし、コストカットすることで余計な業務が削減されるため、ほかの業務にリソースを割けるようになります。

その結果、業務の効率化につながるのです。レガシーシステムの抜本的な見直しなどによって、効率的な企業運営が求められます。

3-4.従業員のモチベーションが向上する

コストカットすることで、削減した業務に発生していた費用が浮き、新たな利益が生まれます。

利益の一部を従業員に還元することによって従業員のモチベーションが向上し、組織の活性化が期待できるわけです。

4.コストカットを実施するための4つのステップ

コストカットは、以下の4ステップで実施できます。

  1. 現状のコストを把握する
  2. 明確な目標を決める
  3. 優先順位を決めてコストカットを実施する
  4. PDCAを回しながら改善する

順番に解説します。

4-1.現状のコストを把握する

コストカットを実施するのにしても、どのくらいのコストを削減できる余地があるのかが分からなければ、実行に移せません。

そのため、まずは現時点での自社コストを把握しましょう。

4-2.明確な目標を決める

コストカットを実施する上で、従業員の協力は必要不可欠です。

目標が曖昧だと、どれくらいまでコストカットを行えばいいのか分からず、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。

そのため、どの項目をいつまでにコストカットするのか、明確な目標を決めましょう。

4-3.優先順位を決めてコストカットを実施する

コストカットを実施します。

コストカットしたい項目が複数ある場合には、優先順位を決めて優先度の高い項目から順番に行います。

なおコストカットでポイントとなる優先順位の決め方ですが、以下の通りです。

施策優先度項目
即実行でき、期待される効果が高いIT機器関連コストやオフィスコスト。例えば、コピー代やタブレット費用など
即実行でき、多少の効果が見込まれる光熱費をはじめとするエネルギーコストなど
すぐに実行できないが、効果は高い人件費や採用コストなど

特徴としては、即実行でき高いコスト削減効果が見込まれるIT機器関連コストやオフィスコストなどから見直しを進めます。

これらのコストには、サブスクリプションなどのランニングコストが含まれていますから、高い削減効果が期待できるでしょう。

特に、契約したものの十分に活用されていないIT関連ツールなどは、コストカットの優先順位が高い傾向です。

一方で、人件費や採用コストなど企業の生産性に直結し、従業員の人生に影響をおよぼすコストについては慎重に判断する必要があります。

コスト削減効果は高いかもしれませんが、見直しの優先順位は最後に設定しましょう。

コストカットが完了するまでには時間がかかるので、従業員のモチベーションを維持するためにも、短期的な目標をいくつか設定しておくことが大切です。

4-4.PDCAを回しながら改善する

コストカットを実施する上で、定期的な効果測定も欠かせません。

目標が未達だった場合には、達成できなかった要因を分析して改善につなげます。

納得のいくコストカットを実施するためにも、継続的にPDCAを回すことが重要です。

5.コストカットを実施する際のポイント

コストカットを実施する際には、以下の3つのポイントを意識しましょう。

  • 従業員の負担を考慮する                 
  • 全従業員でコストカットを意識する
  • コンサルティングの活用も検討する

順番に解説します。

5-1.従業員の負担を考慮する

電気代を削減するためにエアコンを停止したり、人員を削減したりするといった過度なコストカットを実施してしまうと、従業員の負担が大きくなり、業務クオリティが低下する恐れがあります。

また、従業員から不満の声が挙がり、コストカットそのものが失敗する可能性があるので、従業員のことをしっかり考えた上で実施しましょう。

コストカットの優先順位については「4-3.優先順位を決めてコストカットを実施する」にて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

5-2.全従業員でコストカットを意識する

上層部だけがコストカットを意識していても意味がありません。

コストカットを成功させるためには、全従業員が意識して取り組む必要があります。

そのためにも、コストカットを実施する上での目標や計画などを必ず共有しておきましょう。

5-3.コンサルティングの活用も検討する

コストのなかには不要なコストと必要なコストの2種類があります。

もし、必要なコストをカットしてしまった場合、生産性や業務クオリティの低下につながり、逆に利益が減少する可能性もあります。

自社でコストカットを実施するのが不安だと感じるのであれば、コンサルティングの活用も検討しましょう。

コンサルティングを活用することで、成功期待度が格段に向上します。

6.コストカットに成功した事例3選

ほかの企業がどのような方法でコストカットを実施しているのか気になる担当者も多いはずです。

コストカットの実施に成功した事例を、厚生労働省が公表している資料「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」を基に3社ほどご紹介します。

生産性に注目した内容ではありますが、生産性を上げる取り組みには、コストカットも密接に関わっています。

  • 三井住友海上火災保険株式会社
  • 株式会社横井製作所
  • 株式会社丸井グループ

6-1.三井住友海上火災保険株式会社

損害保険会社である三井住友海上火災保険株式会社では、業務の効率化を目的としてRPA (Robotic Process Automation)ツールを導入しました。

その結果、月の残業時間を1,200時間も削減することに成功したのです。

そのほかにも19時前には退社するというルールを設けていたり、在宅勤務も推進していたりするなど、働く環境を改善することで人材の定着化を図っています。

残業時間を大幅にカットできれば、当然ながらオフィスコストも削減されますから、理にかなった施策だといえます。

詳しい内容は「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の 12ページをご覧ください。

6-2.株式会社横井製作所

自動車の部品やプラスチック製品などを成形・販売している株式会社横井製作所では、新たなシステムを導入したことで、作業効率の向上に成功しました。

同社では、かつて海外を軸とした製造拠点を検討しましたが、日本生産の品質にこだわるため、また従業員の雇用を守るため、現在の拠点である京都に集中投資することを決意しました。

しかし、労働コストの安いアジアに勝つためには、製品の付加価値を高めながらも生産コストを下げる取り組みが必要だったわけです。

そこで、成形機の自動化など生産現場への革新的な取り組みを実施することで、作業の大幅な効率化を実現しました。

具体的には、生産性は30%アップし、生産コストは20%ダウンを実現しています。

作業効率の向上によって生まれた利益を従業員に還元することで、モチベーションにつながっています。

気になる方は、「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の 16ページをご覧ください。

6-3.株式会社丸井グループ

大型商業施設であるマルイの運営・管理をしている株式会社丸井グループでは、店舗業務を効率化するために最大50通りの就業パターンによるシフトを用意しています。

これにより各店舗に最適化した組み合わせでシフトを運用でき、一人あたりの残業時間の削減を実現しました。

また、インターンシップの取り組みを強化したことで早期離職率が低下し、採用コストの改善にも努めています。

働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の 24ページを参考にしてみてください。

7.まとめ

本記事では、コストカットの基礎知識や実施することで得られる効果・進め方・コストの種類やコストダウンとの違いなどについて解説しました。

コストカットすることで、業務の効率化や従業員のモチベーション向上などが期待できます。

コストカットを実施する際には、従業員の負担を考慮した上で全従業員が意識することが大切です。

本記事を参考に、コストカットの実施を検討してみてください。

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記事を書いた人
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