業務の効率化やコストの削減・従業員満足度の向上など、さまざまな効果が期待できる施策として、多くの企業でBPRに注目しています。
言葉は聞いたことがあっても、どのような施策なのか理解していない担当者も少なくありません。
また、BPRを実施するにあたってどのようなスキルが必要になってくるのか気になる担当者も多いはずです。
そこで本記事では、BPRにおける基本知識からおすすめの手法・実施する上で必要なスキルなどについて解説します。 これからBPRを実施しようと検討しているのであれば、ぜひ最後までご覧ください。
1.BPRとは?業務改善との違いについて
BPRとは、「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フロー・組織の構造などを根本的に見直して再設計する施策のことです。
1990年代のアメリカで元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2人が提唱したことがきっかけで誕生しました。
1993年には2人が共同して出版した書籍「リエンジニアリング革命」によって、日本でも普及しましたが、バブル崩壊時期と重なったこともあり、リストラを助長させてしまう結果となりました。
BPRと似ている言葉として用いられるのが業務改善です。
業務改善は、あくまでも既存の業務プロセスを残した状態で一部の内容のみを改善していきます。
BPRと比較すると、改善する規模が大きく異なるので、意味を履き違えないように注意しましょう。
1-1.BPRが再び注目を浴びるようになった理由
日本でBPRが再び注目を浴びる要因として挙げられるのが、少子高齢化問題です。
「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」によると、少子高齢化は現在も急速に進行しており、2050年には日本の人口が約1億人まで減少すると言われています。
また別の総人口推移を示したデータを見れば、2050年には人口が1億人を下回るだろうとも言われており、このまま有効な対策を講じなければ、歯止めが効かない状態になってしまいます。
その結果、生産年齢人口も急激に減少していくため、これまでのようなやり方では業務が成立しなくなる可能性があるのです。
また、2020年から流行した新型コロナウイルス感染症によって、多くの企業が甚大なる被害を受けています。
これらの状況から脱却するためにも、業務プロセス全体を根本的に見直して再構築する施策であるBPRが再び注目を浴びるようになったのです。
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2.BPRを定義する4つのキーワード
BPRは、以下の4つのキーワードによって定義されています。
- 根本的
- 抜本的
- 劇的
- プロセス
一つずつ解説します。
2-1.根本的
根本的とは、これからBPRを実施するにあたって「なぜBPRを実施するのか」根本から問いかけることです。
目的が設定されていない状態でBPRを実施しても方向性がブレてしまい、失敗に終わる可能性があります。
BPRを成功させるためにも、根本から見つめ直すことが重要です。
2-2.抜本的
抜本的とは、古い要素を切り捨てることです。
古くからの慣習や規則に縛られている企業も少なくありません。
それらの要素を切り捨てることによって、新たな目的や選択肢が見つかります。
2-3.劇的
劇的とは、大きく改善することです。
BPRは、業務内容や業務フロー・組織の構造など、業務プロセス全体を根本的に見直す大規模な改革です。
その結果、大きな成果が期待できます。
2-4.プロセス
プロセスとは、さまざまな要素を取り入れて価値を与えることです。
BPRでは、手法やフレームワーク・ツールなどを導入していくので、自分たちに合った要素を選定することが重要です。
3.BPRを実施する上でのおすすめの手法
BPRを実施する上でおすすめの手法は、以下の3つです。
- ERP
- シェアードサービス
- BPO
順番に解説します。
3-1.ERP
ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略称であり、以下のようなシステムを統合する施策です。
- 会計管理システム
- 販売管理システム
- 在庫購買管理システム
- 生産管理システム
- 人事給与管理システム
日本語で「統合基幹業務システム」や「基幹システム」と訳されることもあり、ERPによって業務の効率化や情報の一元化などが期待できます。
3-2.シェアードサービス
シェアードサービスとは、グループ企業におけるコーポレート業務を1ヵ所に集約させる施策です。
以下のような業務をコーポレート業務と呼びます。
- 経理業務
- 財務業務
- 人事業務
- 総務業務
- 法務業務
- 情報システム業務
シェアードサービスを導入することによって、コストの削減や管理体制の強化など、さまざまなメリットがあります。
ただし、シェアードサービスを実施できるのはグループ企業を持つ大手企業のみとなっているので、注意が必要です。
3-3.BPO
BPOとは「Business Process Outsourcing」の略称であり、業務プロセスの一部を専門業者に委託することです。
導入することによって、業務クオリティの向上や業務の標準化などにつながります。
BPOを導入する際には、これまでの実績や委託可能な業務範囲などをチェックした上で慎重に検討しましょう。
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4.BPRを実施するための5つのステップ
BPRは、以下の5つのステップで実施可能です。
1. 検討
2. 分析
3. 設計
4. 実施
5. モニタリング・評価
順番に解説します。
4-1.検討
検討段階では、BPRの実施に伴い具体的な目標や目的について上層部を中心に話し合います。
また、どの範囲までBPRを実施するのか、対象となる業務範囲についても併せて決めましょう。
4-2.分析
分析段階では、自分たちの現状を把握してボトルネックを洗い出します。
分析する際には、SWOT分析やABC分析・エンタープライズアーキテクチャなどのツールやフレームワークを活用します。
- SWOT分析:自社で管理できる内部環境とそれ以外の外部環境を分けることで、自分たちの状況を客観的に捉えられる
- ABC分析:売上高やコスト・在庫などのグループを3つに分けることで、在庫の管理状況を改善できる
- エンタープライズアーキテクチャ:業務内容やシステムをモデル化することで、企
業全体の最適化が図れる
ツールやフレームワークは種類が豊富にあるため、それぞれの特徴を把握した上で、自分たちに合うものを選びましょう。
4-3.設計
設計段階では、洗い出したボトルネックをどのように改善していくのか、戦略を立てていきます。
BPRを実施するにあたって、全従業員の協力が必要となってきます。
そのため、従業員の意見も積極的に取り入れることが大切です。
自分たちだけでのリソースだけでは実施するのが困難だと感じたら、BPOやアウトソーシングなどの導入も検討しましょう。
4-4.実施
設計段階で立てた戦略を基にBPRを実施していきます。
BPRは、業務プロセス全体を根本的に見直す大規模な業務改革のため、時間がかかります。
従業員のモチベーションを途絶えさせないようにするためにも、短期的な目標をいくつも設定していきましょう。
4-5.モニタリング・評価
実施したBPRのデータを基に、モニタリング・評価していきます。
モニタリング・評価する際には、以下の3つの項目に注目しましょう。
- 予定通りに実施できたか
- 実施途中で問題やトラブルなどは発生しなかったか
- 実施する前と実施した後でどのような変化が表れたか
モニタリング・評価は定期的に行い、修正点がある場合には迅速に対応することで、成功期待度が高まります。
5.BPRを実施する上で必要な7つのスキル
BPRを実施する上で必要なスキルは以下の7つです。
- ロジカルシンキング
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
- 適切な判断力
- 分析スキル
- 業務内容や業務プロセスなどにおける知識
- システムやツールにおける理解力
一つずつ解説します。
5-1.ロジカルシンキング
BPRを実施する上で、ロジカルシンキングは欠かせません。
ロジカルシンキングとは、物事に対して一貫して筋が通っている考え方のことです。
日本語では「論理的思考」と訳されています。
BPRを実施するにあたって目的や目標が漠然としている場合、途中で方向性が大きくブレてしまい、失敗する可能性が高くなります。
しかし、ロジカルシンキングによって論理的に物事が捉えられるようになり、原因を特定することで問題解決につながるのです。
5-2.コミュニケーションスキル
BPRを成功させるためには、従業員との連携が欠かせません。
コミュニケーションスキルがあることで、従業員の状況を逐一把握できるようになり、スムーズにBPRが実行できます。
トラブルや問題が発生した場合でも迅速な対応が可能となるため、成功確率の向上が期待できます。
5-3.マネジメントスキル
BPRを実施するにあたって、全従業員の協力が必要となってきます。
従業員は通常の業務と並行してBPRを実施しなければいけないので、負担が大きくなり、不満の声が挙がることも少なくありません。
しかし、マネジメントスキルがあることで、従業員を適切に管理できるようになります。
その結果、一致団結してBPRを成功へと導くことが可能です。
5-4.適切な判断力
BPRでは、「コンサルを導入すべきか」「どの手法やツールが自分たちに適しているか」など、さまざまな局面において判断が求められます。
一つでも判断を誤ってしまうと、失敗の要因となる可能性もあるので、状況に合った適切な判断力が重要です。
5-5.分析スキル
BPRを成功させるためには、実施する前の段階で自分たちの課題をしっかりと把握しておく必要があります。
そのためにも、手法やツール・フレームワークなどを用いた分析スキルが必要不可欠です。
5-6.業務内容や業務プロセスなどにおける知識
BPRは、業務内容や業務プロセスなどを根本的に見直して問題点を洗い出し、改善する施策です。
しかし、問題点を洗い出すためには、業務内容や業務プロセスなどを深く理解しておかなければいけません。
そのため、BPRの担当者に選ばれたのであれば、これまでの業務資料に目を通して知識を補完しましょう。
5-7.システムやツールにおける理解力
BPRを実施するにあたって、システムやツールを導入することがほとんどです。
システムやツールは種類が豊富にあるので、どれを選べばいいのか迷う担当者も少なくありません。
BPRの成功確率を少しでも高めたいのであれば、それぞれのシステムやツールの特徴を把握しておきましょう。
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6.まとめ
本記事では、BPRにおける基本知識からおすすめの手法・実施する上で必要なスキルなどについて解説しました。
日本では、急速に進行していく少子高齢化問題によって、今後も労働人口が減少していくことが予想されます。
そのため、これからはさらにBPRを実施する企業が増えていくはずです。
BPRを実施する上でロジカルシンキングやコミュニケーションスキル・マネジメントスキルなどが必要となってくるので、本記事をきっかけに担当者は身につけておきましょう。
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