新型コロナウイルス感染症の影響もあり、業務の効率化や生産性の向上を意識する企業が増えてきました。
そこで注目を浴びているのがBPRです。
名前は聞いたことがあっても、どういう意味なのか理解していない担当者も少なくありません。
また、BPRの実施方法や進め方などについて知りたい担当者も多いはずです。 そこで本記事では、BPRを実施する上でおすすめの手法や進め方・サービス・ツールなどについて解説します。
1.BPRとは?普業務改善との違い
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称で、既存の業務フローや業務内容・組織の構造などを根本的に見直して再構築することです。
業務改革とも呼ばれており、1990年代のアメリカで元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏が不況を乗り越えるための施策として提唱したことがきっかけで誕生しました。
1993年には「リエンジニアリング革命」が出版されたことで、当時の日本でも大きな話題となりました。
BPRと似ている言葉として業務改善があります。
業務改善は、あくまでも既存のプロセスを残した状態で部分的に改善を行うことによって無駄な業務を削減し、業務の効率化を図ります。
一方のBPRは、業務プロセスそのものを根本的に見直して改善するので、対象となる規模が大きく異なるのです。
言葉の意味を間違えないようにしましょう。
2.BPRを定義するために重要な4つのキーワード
BPRを実施する際には、以下の4つのキーワードを意識することが重要です。
- 根本的
- 抜本的
- 劇的
- プロセス
順番に解説します。
2-1.根本的
「根本的」とは、BPRを実施する上で「なぜそれをやる必要があるのか」問いかけることです。
目的がないままBPRを実施してしまうと、ゴールが設定されていないので、成功しているのかも分かりません。
そのため、自分たちの状況を分析した上で一つずつ見直して、明確な目的を持つことが重要です。
2-2.抜本的
「抜本的」とは、古い要素を切り捨てることです。
歴史ある企業の場合、古くからの慣習を規則やルールとして、今でも継続しているケースも珍しくありません。
それらの慣習は自分たちにとって本当に必要なのかを客観的に見つめ直すことが、業務の効率化につながります。
2-3.劇的
「劇的」とは、大きく改善することです。
BPRは、業務改善のようにプロセスの一部を改善するのではなく、プロセスそのものを根本的に見つめ直して再構築していきます。
その結果、大きな成果が期待できるのです。
2-4.プロセス
「プロセス」とは、いくつかの要素を取り込むことによって価値を提供することです。
BPRは、業務フローや業務内容・組織の構造などを一から見直していくので、さまざまな要素を取り入れることが重要です。
3.BPRを実施するメリット
BPRを実施するメリットは、主に3つあります。
- 業務の効率化に期待できる
- 従業員満足度や顧客満足度が向上する
- ヒューマンエラーが起きにくくなる
順番に解説します。
3-1.業務の効率化に期待できる
BPRを実施することで、業務フローや業務内容などの企業全体における業務プロセスを根本的に見直せます。 その結果、課題となっている部分を洗い出し、改善することによって業務の効率化に期待できるのです。
3-2.従業員満足度や顧客満足度が向上する
最近では人材の流動化が加速しているため、1人でも多くの従業員を定着させるために従業員満足度の向上に注力する企業も増えてきています。
BPRを実施することで、労働時間の削減やリモートワークの導入による職場環境の改善などに期待できます。
その結果、従業員満足度が向上し、仕事に対するモチベーションが高まることで、顧客満足度の向上にもつながるのです。
3-3.ヒューマンエラーが起きにくくなる
BPRの実施に伴い、最新のシステムを導入することもあります。
システムを導入することで業務の自動化が可能となるため、ヒューマンエラーの防止につながります。
4.BPRを実施するデメリット
BPRは、メリットだけでなくデメリットもあります。主なデメリットは、以下の2つです。
- コストがかかる
- 従業員との関係が悪化する恐れがある
一つずつ解説します。
4-1.コストがかかる
初めてBPRを実施する場合、コンサルタントを活用したりシステムやツールなどを導入したりすることもあります。
BPRは長期間におよぶ大規模な施策であり、全従業員の協力が必要不可欠のため、さまざまなコストがかかります。
資金やリソースが不足してしまい、途中で中断する事態になってしまうと、従業員の混乱を招く恐れがあるので、あらかじめどれくらいのコストがかかるのかを計算しておきましょう。
4-2.従業員との関係が悪化する恐れがある
BPRを成功させるためには、従業員の協力が欠かせません。
BPRを実施する場合、従業員は通常の業務と並行しなければいけないので、一時的にこれまで以上に負担が大きくなります。
そのため、従業員の負担を一切考慮せずに上層部だけでBPRを進めてしまうと、従業員から反感を買ってしまい、拒否されてしまうこともあります。
BPRの実施をきっかけに従業員との関係が悪化する恐れがあるので、上層部は従業員の状況を踏まえた上で、最適なタイミングを見計らって実施することが重要です。
5.BPRを実施するための5つのステップ
BPRは、以下の5つのステップで実施できます。
- 検討
- 分析
- 設計
- 実施
- モニタリング・評価
順番に解説します。
5-1.検討
検討段階では、上層部を中心に目的や目標を設定していきます。
認識の相違によって目的や目標がずれないように明確に決めることが重要です。
また、課題となっている部分も大まかに話し合い、対象となる業務範囲も一緒に決めましょう。
5-2.分析
分析段階では、サービスやツール・手法などを用いて自分たちの状況や課題点となっている部分を分析していきます。
売上高やコスト・在庫状況などの項目に優先順位を決めるABC分析や、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの観点から業績を評価するBSC分析などがおすすめです。
5-3.設計
設計段階では、分析段階で洗い出した課題となっている部分の改善手段として戦略を練っていきます。
課題となっている部分が複数箇所ある場合には、優先順位をつけるとスムーズです。
自分たちだけではリソースが足りないと判断したのであれば、アウトソーシングの活用も検討しましょう。
5-4.実施
BPRを実施します。
BPRは、企業全体における業務プロセスそのものを根本的に見直して改善するので、時間がかかります。
時間がかかると、従業員のモチベーションも徐々に低下してしまうので、短期的な目標をいくつか設定することが重要です。
5–5.モニタリング・評価
BPRの実施後は、これまでの内容をモニタリングして評価します。
評価する際には、以下の3点に注目しましょう。
- スケジュール通りにBPRを実施できたか
- イレギュラーな事態は発生しなかったか
- BPRを実施する前と実施した後でどのような効果を感じられたか
6.BPRを実施する上でおすすめの6つの手法
BPRを実施する上でおすすめの手法は、以下の6つです。
- ERP
- シックスシグマ
- シェアードサービス
- アウトソーシング
- BPO
- SCM
どのような状況でどの手法を検討すればいいのかについても一緒に解説します。
6-1.ERP
ERPとは、「Enterprise Resources Planning」の略称で、以下のような業務を一元管理できるシステムです。
- 会計業務
- 人事業務
- 生産業務
- 物流業務
- 販売業務
一元管理することによって効率よく業務が進められたり、意思決定がスピーディーになったりするなどのメリットがあります。
BPRの検討段階から非常に役立ちます。
6-2.シックスシグマ
シックスシグマとは、統計学に基づいて各プロセスの原因を特定することで、不良品率の低下や顧客満足度の向上につながる1980年代に開発された品質管理手法です。
「DMAIC」と呼ばれるプロセスを基にして行われます。
- Define(定義)
- Measure(測定)
- Analyze (分析)
- Improve(改善)
- Control(管理)
分析段階において非常に役立つ手法です。
6-3.シェアードサービス
シェアードサービスとは、グループ化している企業における特定の業務を1ヵ所に集約させる手法です。
シェアードサービスを利用することによって、リソースを有効的に活用できたりコストの削減につながったりするなどのメリットがあります。
ただし、シェアードサービスを利用できるのはグループ会社を持つ企業のみとなっているので、注意が必要です。
6-4.アウトソーシング
アウトソーシングとは、業務の一部を外部に委託する手法です。
アウトソーシングを活用することによって、リソースを確保できるようになります。
そのため、BPRの実施に伴いリソースが逼迫している企業におすすめです。
分析段階や設計段階の際に検討してみましょう。
6-5.BPO
BPOとは「Business Process Outsourcing」の略称で、アウトソーシング同様に、業務を外部に委託することを指します。
しかし、BPOはアウトソーシングと異なり、業務の一部ではなく総合的で専門性の高い業務を丸ごと委託可能です。
そのため、大幅なコストの削減や業務クオリティの向上に期待できます。
言葉の意味は似ていますが、間違えないようにしましょう。
分析段階や設計段階において役立ちます。
6-6.SCM
SCMとは「Supply Chain Management」の略称で、原材料の調達から製品を届けるまでのデータや財務状況などを総合的に見直して管理する手法です。
SCMを活用することで、在庫管理の最適化や情報の一元管理・市場分析なども簡単に行えます。
ただし、SCMを実施するためにはシステムを導入する必要があります。
システムを導入するにはある程度の費用がかかるので、検討段階や分析段階で話し合いましょう。
7.BPRにおすすめのサービスやツール5選
BPRを実施する上で、おすすめのサービスやツールは以下の5つです。
- RPA
- チャットボット
- クラウドサービス
- BPR(業務改革)支援サービス|コムテック株式会社
- BPEC|株式会社 TMJ
一つずつご紹介します。
7-1.RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、これまで人間が行っていた作業をAIが代行してくれる取り組みのことです。
PRAは24時間365日いつでも稼働してくれるので、自分たちが行う業務を大幅に削減できます。
ただし、単純作業や定期作業のみが対象となるため、注意が必要です。
7-2.チャットボット
チャットボットとは、自動でコミュニケーションが図れるツールです。
ホームページのようなWebサイト上に設置することで、自分たちの代わりにユーザーの対応を行ってくれます。
最近ではA Iの進歩により、さらに人間に近いコミュニケーションが可能となっているので、顧客満足度の向上や業務の効率化に期待できます。
7-3.クラウドサービス
ハードやソフトを準備することなく、インターネットがあるだけで利用できるクラウドサービスもBPRを実施する上でおすすめです。
クラウドサービスを導入することで、コストが抑えられたり情報共有が容易になったりするなどのメリットがあります。
インターネット環境さえあればどこでも使えるので、テレワークのような柔軟な働き方も可能です。
7-4.BPR(業務改革)支援サービス|コムテック株式会社
コムテック株式会社が提供しているBPR(業務改革)支援サービスでは、以下の3点による豊富な視点によって最適な改善案を提供してくれます。
- 原因別分類
- 影響範囲別分類
- ECRS分類
コムテック株式会社では、40年以上BPOサービスを行っているので、BPRを実施している最中にリソースが足りなくなった場合には、BPOサービスも一緒に依頼可能です。
システムの導入支援も充実しているため、プロセスの一部のシステム化を検討している場合にもおすすめです。
7-5.可視化から始めるおまかせBPRサービス|株式会社 TMJ
株式会社 TMJ では、BPECと呼ばれる簡易業務量調査ツールを使って「可視化から始めるおまかせBPRサービス」を提供しています。
BPECによって、現状把握から改善策の提案・外部リソースの活用まで短期間でありながら低コストで行えます。
また、管理者とオペレーターをセットで提供しているので、検討段階からトータルでBPRをサポートしてもらいたい企業におすすめです。
8.コンサルタントの活用も検討しよう
BPRにおすすめの手法やサービス・ツールなどをご紹介しましたが、BPRの知識や経験が乏しいため、自分たちだけでは決められないという担当者も多いはずです。
そんなときには、コンサルタントの活用も検討しましょう。
コンサルタントを活用することで、以下のようなメリットに期待できます。
- 客観的な意見を取り入れられるため、合理的な判断が下せる
- 迅速かつ正確な判断ができるため、効率的にBPRを実施できる
- 専門的なスキルやノウハウを兼ね備えているので、成功確率が大幅に高まる
ただし、コンサルタントを活用しても必ず成功するというわけではありません。
予想以上に費用がかかったりBPRの知見が溜まりにくかったりするというデメリットもあるので、注意しましょう。
9.まとめ
本記事では、BPRを実施する上でおすすめの手法や進め方・サービス・ツールなどについて解説しました。
BPRを実施することで、業務の効率化だけでなく従業員満足度や顧客満足度が向上するなどのメリットが期待できます。
ただし、BPRは時間がかかるため、成功する確率を高めて効率的に実施したいのであれば、今回ご紹介した手法やサービス・ツールなどの活用を検討してみましょう。