コロナ禍ということもあり、企業では働き方改革や業務改革が進んでいます。働き方改革や業務改革を進めていく上で、一度はBPRという言葉を聞いたことがあるはずです。
しかし、どのような意味なのか理解していない担当者も多いのではないのでしょうか。
そこで本記事では、BPRの基礎知識や業務改善との違い・ BPRを導入するメリット・ポイントなどについて解説します。
1.BPRとは
BPRとは:
「Business Process Reengineering」の略称で、以下のような内容を根本的に見直し、再構築することを指す。
- 業務内容やフロー
- 組織構造
- 導入している情報システム
BPRという考え方は、1993年にマイケル・ハマーとジェームス・チャンピーによって発表された「リエンジニアリング革命」によって一気に広がりました。
近年では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経営状況が悪化したことで、多くの企業がBPRを実施しています。
2.BPRと業務改善との違い
BPRと似ている言葉として挙げられるのが業務改善です。業務改善は、あくまでもプロセスは残した状態で問題点や修正が必要な業務内容のみを改善します。
一方のBPRは、業務内容や業務フロー・組織構造など、企業全体を根本的に見直していくものです。
つまり、業務改善とBPRは、改善するという意味では同じですが、規模が異なります。意味を履き違えないように注意しましょう。
3.BPRを実施する際に重要となるキーワード
BPRを実施する際には、以下の4つのキーワードが重要になってきます。
- 根本的
- 抜本的
- 劇的
- プロセス
一つずつ解説します。
3-1.根本的
BPRにおける「根本的」とは、「なぜ現在の業務フローを実施しているのか」理由について根本から問いかけることです。
現在行っている業務はなぜ必要なのか、現在の企業組織にはどのような意図や意味があるのかなど、一つずつ見直していくことで、改善につながります。
3-2.抜本的
「抜本的」とは、古くなってしまった要素を切り捨てたり、昔から慣習だけで行っている業務を見直したりするという意味です。
特に歴史のある企業の場合、業務について見直す機会も減っているため、昔からの慣習を優先してしまい、業務効率化を図れていないことも少なくありません。
時代に対応した業務プロセスでないと業務効率化につながらないので、客観的に見つめ直す必要があります。
3-3.劇的
「劇的」とは、大きな改善を行うという意味です。細かな業務改善だけでは、ビジネスで大きな成果は得られません。
そのため、BPRで企業全体における大規模な改革を行うことが大切です。
3-4.プロセス
「プロセス」とは、以下のような複数の要素を取り込んで、顧客に企業価値を伝えられるように、アウトプットすることです。
- 業務フロー
- 人員配置
- 役割分担
顧客満足度の高いプロセスを構築することで、企業価値の向上に期待できます。
4.BPRを実施する5つのメリット
BPRを実施するメリットは、以下の5つです。
- 企業の生産性アップ
- 業務改善点が明確になる
- マンパワーやコストの削減
- 社内の意識改革が進む
- 顧客満足度と従業員満足度アップ
順番に解説します。
4-1.企業の生産性アップ
BPRは、業務内容や業務フローなどを見直して企業全体を改革する取り組みです。企業レベルで問題点を洗い出すことで、生産性には関係ないと思われていた部分から原因を発見できることもあります。
原因を改善することで、企業の生産性アップにつながるのです。
4-2.業務改善点が明確になる
BPRを実施することで、企業の全体像を一から洗い出すため、業務の改善点が明確になります。
その結果、抜本的な計画が立てやすくなるのです。
4-3.マンパワーやコストの削減
BPRによって、マンパワーやコストの削減も可能です。
なぜなら、BPRを活用して企業全体の業務プロセスを見直すことで、業務における無駄なマンパワーやコストが明確になるからです。
無駄な業務を改善することで、業務の効率化や残業時間の削減・売り上げの向上に期待できます。
4-4.社内の意識改革が進む
BPRは、企業全体における業務プロセスの見直しや再構築を行う取り組みです。
業務内容や業務フローを見直していくことで業務の無駄を削減し、自発的に効率化を図ろうとする従業員が増えるため、意識改革にもつながるのです。
4-5.顧客満足度と従業員満足度アップ
BPRを実施することで、業務の効率化や職場環境の改善に期待できます。
その結果、長時間労働が減り、生産性の高い働き方が可能となるため、従業員の満足度がアップします。
業務の効率化により最終的には売り上げにも直結するので、商品やサービスに資金を充てることで、顧客満足度の向上にもつながるのです。
5.BPRの進め方
BPRは、以下の5ステップで実施します。
- 検討
- 分析
- 設計
- 実施
- モニタリング・評価
一つずつ順番に見ていきましょう。
5-1.検討
最初にBPRを実施する目的や目標・実施方法などを決めていきます。
BPRは、社内の業務プロセスや組織構造などについて大規模な改革を行うため、社内の考え方を統一することが重要です。BPRの対象範囲も明確に決めましょう。
5-2.分析
次に、業務内容やプロセスなどを分析します。 分析するには、以下の2つの方法がおすすめです。
- ABC分析:さまざまな指標から重要なポイントを導き出して優先度を決める分析手法
- BSC分析:戦略目標を評価してKGIやKPIに結びつけるためのフレームワーク
5-3.設計
分析結果を基に、BPRの設計方針を決めていきます。BPRは時間がかかるため、改善したい内容ごとに優先順位をつけましょう。
優先順位が低く、自社で行わなくてもいい業務内容であれば、アウトソーシングするのもおすすめです。
5-4.実施
BPRを実施します。BPRの施策として有効なのが、最新のITシステムです。最新のITシステムを導入することで、大幅に業務プロセスを効率化することが可能です。
クラウドサービスであれば機器を設置する必要もなく、低コストで始められます。社内全体ですぐに導入できるため、短期間で効果に期待できます。
5-5.モニタリング・評価
最後に、「BPRを実施してどれくらいの効果があったのか」「業務改革がどのくらい進んだのか」など、モニタリング・評価します。
問題点があれば迅速に修正し、BPRを成功につなげましょう。
6.BPRの代表的な手法
BPRの代表的な手法は、以下の3つです。
- ERP
- BPO
- シェアードサービス
一つずつ解説します。
6-1.ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)とは:
「統合基幹業務システム」や「基幹システム」などと日本語で訳し、企業内の情報を一元管理ができる。
一元管理することによって、業務内容や業務フローを見える化し、問題点を洗い出すことが可能です。
6-2.BPO
BPO(Business Process Outsourcing)とは:
一部の業務を外部に委託すること。
BPOを導入することで、専門的な知識やスキルが必要となるコア業務にリソースを確保できます。
BPOの対象となる業務は、以下の通りです。
- 財務
- 経理
- 総務
- 人事
6-3.シェアードサービス
シェアードサービスとは:
似ている内容の業務を一つに集約すること。
シェアードサービスを導入することで、業務の効率化やコストの削減に期待できます。
7.まとめ
本記事では、BPRの基礎知識や業務改善との違い・ BPRを導入するメリットやポイントなどについて解説しました。
BPRは業務内容や業務フローなどを根本的に見直せるため、社内の問題点の改善や社員の意識改革を迅速に進められます。
また、BPRと業務改善はどちらも意味が異なるので、間違えないように注意が必要です。本記事を参考に、BPRと業務改善の違いを理解した上で最適なBPRを実施しましょう。