企業の生産性や効率を向上させるためには、業務の現状を正確に把握し、問題点を明らかにすることが重要です。しかし、業務が属人化し、ブラックボックス化している場合、現状の把握すら困難です。
そこで、「業務の見える化」が重要な手段となります。見える化は単に状況が見えるだけではありません。「どこにどのような問題があるのか?」「部署間、部署内で連携すべきことはないか?」といった課題を認識することで、業務改善や生産性の向上につながります。また、今まで個人で持っていた知識やノウハウ、課題を社内全体に共有し、誰でもわかる状態にすることも見える化です。
業務改革を始める第一歩として「業務の見える化」は劇的な効果を発揮します。この記事では、「業務の見える化」を進めるために必要な情報、ポイント、注意点について詳しく解説します。
「業務の見える化」の重要性や効果はこちらにもまとめていますので参照ください。
「業務の見える化」とは?いま注目されている理由とメリットを解説
1. 「業務の見える化」をすべき内容とは?
「業務の見える化」を進めるにあたり、具体的に何を見える化するべきかを考えることが重要です。以下に、見える化すべき6つの主要な項目を紹介します。
① 業務フローやナレッジ
業務フローやナレッジの見える化は、業務の全体像を把握し、属人化を防ぐために不可欠です。以下のような情報を見える化します。
- 業務の全体像
業務の流れを図解し、どのような手順でタスクが進むかを明確にします。フローチャートやプロセスマップを用いると分かりやすくなります。
- 具体的な作業手順やノウハウ
各タスクの詳細な手順を文書化し、誰でも理解できるようにします。マニュアルやチェックリストを作成するのが有効です。
さらに、ポイントとなるタスクには必要な知識やノウハウを整理し、共有します。社内Wikiやナレッジベースを活用すると、情報の検索・参照が容易になります。これにより、新入社員や他部門のメンバーでも業務の理解が深まり、ミスの減少や業務の効率化に有用なのはもちろん、指導者の負担軽減にもつながります。
② タイムスケジュール
いつ、どこで、どの業務をしているかといったスケジュールが共有されていないと、急ぎで確認したいことがあってもできない、会議や外出のセッティングなど、など業務のさまざまな場面でスムーズに連携が取れません。
タイムスケジュールの見える化は、業務の計画と実行をスムーズにするために重要で、比較的すぐに実行できるので優先的に進めましょう。
- 個人のスケジュール
各従業員の予定をカレンダーやガントチャートで視覚化し、他のメンバーが容易に確認できるようにします。これにより、連絡や会議の調整がスムーズになります。
- チームのスケジュール
チーム全体の予定を共有し、プロジェクトの進捗状況を把握します。プロジェクト管理ツールを使用することで、進行状況をリアルタイムで確認できます。
具体例として、ガントチャートやカレンダーアプリなどを活用することで、タイムスケジュールの見える化が容易に行えます。
③ 勤怠状況
従業員の勤怠を正確に記録する見える化は、単純に勤務時間や休憩時間の情報を取得するという点を見るだけでなく、社員の仕事量の把握にもつながります。残業時間の過多や休憩が取れているかなどを見ることで、特定社員への過剰な業務割り当ての有無や、逆に余裕のある社員が他にいないかなどが把握でき、状況に応じた適切な仕事の割り振りができるようになります。
④ 業務やタスクの進捗
業務やタスクの進捗の見える化は、プロジェクトの成功に不可欠です。以下の要素を見える化します。
- タスクの進捗状況
各タスクの進行状況をリアルタイムで把握し、遅延や問題を早期に発見します。問題に対して適切な対策を講じることで、プロジェクト全体のスムーズな進行をサポートできるようになります。
- プロジェクトの全体像
プロジェクト全体の進捗を一目で確認できるようにします。これにより、リソースの最適配分やスケジュールの調整が容易になります。
プロジェクト管理ツールや進捗管理シートを利用することで、リアルタイムで進行状況を確認・管理できます。
⑤ コミュニケーション履歴
社内外のコミュニケーション履歴を保存し、共有します。これにより、誰がどのような情報を提供したか、どのような指示や依頼があったかを一目で確認でき、コミュニケーションの齟齬を防ぐことができます。コミュニケーション履歴の見える化は、情報共有だけでなく意思決定の迅速化に役立ちます。
- メールやチャットの履歴
重要なコミュニケーションの記録を保存し、必要な情報を迅速に検索できるようにします。
- 会議の記録
会議の議事録を共有し、決定事項や持越事項、to-DOなどを明確にします。
⑥ パフォーマンス評価
パフォーマンス評価の見える化は、従業員のモチベーション向上と公正な評価に直結します。成果と過程に関わるポイントの見える化を進めましょう。
- KGI(重要目標達成指標)
KGIは長期間を対象に設定するゴール(最終目標)です。KGIが明確でないと、次に挙げるKPIが設定できません。例えば「半年間で売上1,200万円達成」というような定量的なKGIを設けることで、達成するためには何をしないといけないのか、といった日々のタスクの内容や進め方に直結します。
KPI(重要業績評価指標)
目標達成に向けたプロセス(過程)の達成度合いを把握、評価する指標が「KPI」です。先に挙げた「半年間で売上1,200万円達成」といったKGIに対して、KPIは「月の売上200万円達成」や「新規顧客を10件獲得」といった最終目標に達成するまでに存在する小さなゴールのようなものです。
KPIの達成状況を確認することは、目標までの進捗を把握することにつながります。各従業員やチームのKPIを見える化し定期的に確認することで、対目標の到達度も客観的に判断でき、最終目標達成に向けた行動を促すことができるだけでなく、進捗に遅れがあった場合に組織内で適切なフォローすることもできます。
2. 「業務の見える化」を進める上でのポイント
「業務の見える化」を進める際、実行すべき情報や内容は決まっていても、目的や目標といったビジョンがないまま進めてしまうと、見える化自体が目的になってしまい、適切な成果を得られません。こちらでは見える化によって成功へ導くための取り組みのポイントと注意点をお伝えします。
① 目的やゴールを明確にする
「業務の見える化」を成功させるためには、最初に「何を改善したいのか」といった最終目的を明確にし、その最終目的のために見える化を実行する対象や手段、実施期間などを策定することが重要です。
- 目的の設定
具体的な目的を設定することが「業務の見える化」を進める上での第一歩です。以下の例のように目的を明確にすることで、全員が同じ方向を向いて業務改善に取り組むことができます。
・生産性の向上: 作業時間の短縮や生産量の増加を目指す。
・業務の効率化: 無駄なプロセスや重複作業の削減を目指す。
・属人化の解消: 特定の人に依存する業務を減らし、誰でも対応できる体制を作る。
- 目標の具体化
目的を達成するための具体的な目標を設定します。例えば、タスク完了までの時間を短縮する、エラー率を低減する、年間の残業時間を〇〇時間削減するなどです。
- 手段の選定
目的と目標を達成するために、どのような手段やツールを使用するかを選定します。手段の選定には、業務内容やチームの特性を考慮することが重要です。業務プロセス管理ツール、プロジェクト管理ツール、コミュニケーションツールなど、目的に合ったツールを選定します。
② 施策情報を全社的に共有する
「業務の見える化」を成功させるためには、見える化の対象や手段、実施期間などの情報を全社に共有し、全員が共通の認識を持つことが重要です。なぜなら、会社の規模感にもよりますが、「業務の見える化」のような全社での取り組みを進める場合、その意図や進め方、ツールの活用の仕方といった大枠~詳細の認識が各従業員でギャップが生じてしまう可能性が高いからです。
- 事前全体共有
まず、見える化実行前に全社的な情報共有をすることで、従業員の理解と協力を得やすくなり、プロジェクトの成功確率が高まります。全員が同じ場で情報を受け取ることで、誤解や認識のズレを防ぎます。見える化プロジェクトを開始する際に、プロジェクトの目的、目標、手段、実施期間を詳細に説明します。特に、新しいツールや方法を導入する場合、その使い方や期待される効果を具体的に示します。
- 分析・評価を客観的かつ定量的に実行し、改善効果を共有集
また、見える化プロジェクト開始後は、各種ツールを確認して定量的なデータを収集した上で効果を評価し、施策の進捗や成果を定期的に社内に共有しましょう。「業務の見える化」の施策では定期的に振り返りを行うことが重要です。
共有方法は、定期的な振り返りのミーティングだけでなく、社内ポータルやWikiで施策状況を随時公開し、全社員が常に最新の情報にアクセスできる状態にすることが重要です。
③ 自社に合った「業務の見える化」ツールを導入する
「業務の見える化」を進めるにあたり、専用のツールを導入することもおすすめします。自社で0から見える化する仕組みを考えるのは、時間もコストも必要になってしまいます。専用ツールなら必要な機能が網羅されていて、手間や労力を大幅にカットすることができます。無料で利用できるものもあるので、自社の目的とゴールに合ったツールの導入も検討しましょう。
- マニュアル作成ツール
Wikiベースのドキュメント作成機能を持ち、チームでの共同編集が可能な「Confluence」はテンプレが豊富で検索・参照もしやすいので、知見やナレッジの蓄積と共有に適しています。
- スケジュール管理ツール
GoogleカレンダーやMicrosoft Outlookのカレンダー機能を活用することで、タイムスケジュールの見える化が容易に行えます。
- 勤怠管理ツール
勤怠の管理で「AKASHI」は中小~大企業まで幅広く利用されおり、初期費用0円で始められるのもポイントです。
- タスク管理ツール
タスク管理に有用なツール「Asana」は、タスクの優先順位や進捗を一目で把握でき、タイムラインも共有可能で、チーム全体での状況把握やプロジェクト管理が効率的に行えます。
- コミュニケーションツール
コミュニケーションは「Slack」や「chatwork」などのチャットでのやり取りすることで、電話のように相手の業務に割り込むことなくスピーディーに連携が取れ、また履歴も残るため有用といえます。また、会議の記録にはGoogleドキュメントやMicrosoft OneNoteが便利です。
- 評価ツール
企業に合わせた評価シートを柔軟に作成できる「タレントパレット」はAIを活用して社員のパフォーマンスを分析できたり、企業・職種ごとに異なる評価シートを反映できる機能もあります。
- 生産性改善ツール
組織の生産性、社員の働きぶりを見える化できる「motto」は 業務のログをAIが自動で収集・分析し、採用人数の適正化、人事フィードバックへの活用など、組織の生産性改善に役立ちます。
3. まとめ
「業務の見える化」において可視化すべき情報と重要なポイントについて解説しました。見える化の取り組みを進める際は、目的をしっかりと把握・共有し、どのようなインパクトが期待できるのかを検討してから実行しましょう。運用がスムーズに行えるように、全社員との情報の密な連携や内容に応じてツールの導入し行うこともポイントです。
「業務の見える化」を進めることで、業務の無駄を削減し、効率的な業務運営が実現します。また、従業員のモチベーション向上や働きやすい環境の構築にもつながります。見える化を実践し、企業全体の生産性を向上させるために、この記事で紹介したポイントを参考にしてください。