業務の効率化を行うことによって、これまで以上に従業員が働きやすくなり、コストの削減やモチベーションの向上などが期待できます。
しかし、どのような方法で業務の効率化を行えばいいのか分からないという担当者も少なくありません。
そこで本記事では、業務の効率化を行うメリットや方法・実際の手順などについて解説します。 また、業務の効率化を行う上でおすすめのツールもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.業務の効率化とは?
業務の効率化とは、業務フローや業務内容における「ムリ・ムダ・ムラ」をなくして、効率的に業務を行うための施策のことです。
ムリ・ムダ・ムラにおける一例は以下の通りです。
- ムリ:現実と達成するための目標が大きくかい離しており、従業員のモチベーションが低下している
- ムダ:古くからの習慣が根強く残っており、非効率的な環境で作業している
- ムラ:人材の定着率が悪いため、業務クオリティが不安定になっている
上記のようなムリ・ムダ・ムラを改善することで、企業にとってさまざまなメリットが期待できます。
1-1.生産性の向上や業務の自動化との違いについて
業務の効率化と似ている言葉として、「生産性の向上」や「業務の自動化」があります。
それぞれの意味は以下の通りです。
- 生産性の向上:リソースをなるべく抑えて、それ以上に業務の生産性を向上させる
- 業務の自動化:ツールを導入することで、一部の業務を自動化させる
一方、業務の効率化は業務全体におけるムリ・ムダ・ムラを排除することで、業務を効率的に行う施策です。
つまり、リソースそのものを根本的に見直す点が生産性の向上とは違います。
それぞれの言葉の意味は異なりますが、業務の効率化は生産性を向上させるための施策の一部といえます。
また、「リソースそのものを見直す」「生産性を向上させる」この2つの施策を展開する上で、一部業務を自動化させるなど、これらの施策はすべて連動しているのも特徴です。
>>業務の自動化によるメリットやデメリット・進め方などについて解説!
1-2.BPRの実施も検討するのがおすすめ
業務の効率化を行うのであれば、BPRの実施も検討しましょう。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フローはもちろん、組織の構造など企業全体を根本的に見直す施策のことです。
1990年代のアメリカにおいて、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2名が不況を脱却するために提唱しました。
BPRの一環として、業務の効率化を実施する企業も多く見受けられます。そのため、BPRも意識しながら業務の効率化を進めていきましょう。
BPRについて詳しく知りたい担当者は、以下の記事をご覧ください。
>>BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!
2.業務の効率化が注目を集めている2つの理由
業務の効率化が注目を集めている理由は以下の2つです。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 働き方改革関連法の施行
順番に解説します。
2-1.少子高齢化による労働人口の減少
日本で深刻な問題となっているのが、少子高齢化による労働人口の減少です。
経済産業省が発表した「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」によると、2050年の段階で日本の人口は約1億人まで減少するといわれています。(「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」の3ページ目を参照。)
現在も多くの企業が人材不足に悩まされています。
そのため、なるべく少ないコストで効率的に業務を実施するために、業務の効率化が注目を集めているのです。
2-2.働き方改革関連法の施行
政府は2019年4月1日に「働き方改革関連法」を施行しました。
時間外労働の上限規制が定められたことで、これまでのような長時間労働ができなくなりました。
しかし、業務量はこれまでと変わらないので、多くの企業で業務の効率化を行うようになったのです。
3.業務を効率化する3つのメリット
業務を効率化するメリットは以下の3つです。
- コストが削減できる
- 増益が期待できる
- 従業員のモチベーション向上につながる
一つずつ解説します。
3-1.コストが削減できる
人手不足の影響から、従業員一人あたりの業務量が増加傾向にある企業も多いはずです。
その結果、必然的に残業する従業員が増えてしまい、結果的に残業代が企業にとって大きな負担となっているケースもあります。
しかし、業務を効率化することで労働時間を短縮させることが可能です。
その結果、定時で帰れるようになるので、残業代がかからなくなり、コストの削減が期待できるのです。
3-2.増益が期待できる
業務を効率化することで、余剰分のリソースを別の業務に充てることが可能です。
その結果、生産性の向上や新規事業の開拓などにもつながるため、増益が期待できます。
3-3.従業員のモチベーション向上につながる
最近では、ワークライフバランスを重視する求職者も増えてきています。
業務の効率化によって労働時間が短縮されるため、これまで以上に働きやすい職場環境が構築されて、離職率が改善されます。
また、生産性の向上や新規事業の開拓などによって増益が期待できるため、利益の一部を従業員に還元することで、モチベーションの向上につながるのです。
4.業務を効率化する2つのデメリット
業務の効率化は、メリットだけでなくデメリットもあります。
主なデメリットは以下の2つです。
- 不満の声が挙がる可能性がある
- 費用がかかる
順番に解説します。
4-1.不満の声が挙がる可能性がある
業務を効率化することで労働時間が短縮されるため、プライベートの時間を確保できて恩恵を受ける従業員もいれば、これまでのように残業代で稼げなくなるため、素直に喜べない従業員もいます。
また、業務の効率化に伴いツールを導入することもあるので、従業員は一から操作方法を覚える必要があり、慣れるまで時間がかかります。
その結果、一部の従業員から不満の声が挙がる可能性があるのです。
従業員との関係性を悪化させないようにするためにも、無理に実施するのではなく、従業員一人ひとりの意見を考慮した上で、業務の効率化を行うか判断しましょう。
4-2.費用がかかる
業務の効率化によってツールを導入する場合、当然ですが費用がかかります。
ツールの性能によって費用は大きく異なるので、自社の予算に合ったツールを選びましょう。
5.業務を効率化する7つの方法
業務を効率化する方法として、以下の7つがあります。
- 不要な業務から削減していく
- 業務マニュアルを作成する
- アウトソーシングを利用する
- RPAツールを導入する
- データを一元管理する
- 業務フローを作成する
- スキルやテクニックを習得する
一つずつご紹介します。
5-1.不要な業務から削減していく
業務の効率化を進めるためには、不要な業務を削減していくことが重要です。
そのため、まずは業務全体を見直して不要な業務がないかチェックしましょう。
実際に不要だと思う業務があれば削減することで、業務の効率化に一歩近づくはずです。
5-2.業務マニュアルを作成する
業務を行うにあたって、やり方やルールなどが明確に決まっていないと、担当する従業員によって業務を遂行するまでの時間が大きく変わってしまいます。
そのため、業務を効率化したいのであれば、マニュアルを作成しましょう。
マニュアルを作成することで、業務クオリティや業務時間の均一化が図れます。
誰が見てもすぐに理解できるよう、マニュアルは図や表などを用いて分かりやすくしましょう。
5-3.アウトソーシングを利用する
業務を効率化する上で、アウトソーシングを利用している企業も少なくありません。
アウトソーシングとは、業務の一部を外部に委託する施策のことです。
アウトソーシングを利用することで、専門的なスキルやノウハウが必要とされる「コア業務」にリソースを充てたり、人件費の削減につながったりするなどの効果が期待できます。
しかし、アウトソーシングを依頼できる会社は数多くあるため、複数社から見積もりを取った上でどこに依頼するか決めるのがおすすめです。
5-4.RPAツールを導入する
RPAツールを導入する企業も増えてきています。
RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、これまで人が行っていた業務の一部をコンピューターによって自動化する仕組みのことです。
RPAツールを導入することで、業務の効率化はもちろん、業務クオリティの向上やコストの削減が期待できます。
最近ではAIを搭載したRPAツールも開発されてきているので、難易度の高い業務も自動化することが可能です。
>>業務自動化に伴うRPAとは?種類や導入するメリット・導入手順についてご紹介!
5-5.データを一元管理する
業務を遂行するにあたってデータが必要な際に、どこにあるのかが分からず、探すのに時間がかかってしまうことも少なくありません。
データを一元管理することで、いつでもスムーズにデータが取り出せるようになります。
その結果、業務の効率化につながるのです。
5-6.業務フローを作成する
業務を効率化したいのであれば、業務マニュアルだけでなく業務フローも作成しておきましょう。
業務フローを作成することで、一連の流れを把握できるため、従業員は次回のアクションを考えながら業務を進められるようになります。
その結果、業務時間の短縮が期待できるのです。
5-7.スキルやテクニックを習得する
キーボードのショートカットキーを覚えたり、タイピング速度を上げたりするなど、業務を行う上でのスキルやテクニックを習得することで、これまで以上に作業スピードが上がり業務の効率化につながります。
これらのスキルやテクニックは、日頃の業務から常に意識することで自然と身につけられるため、従業員に積極的に呼びかけてみましょう。
6.業務の効率化を進めるための5つの手順
業務の効率化は、以下の5つの手順で進めていきます。
- 現状を把握・分析する
- 目標を設定する
- 自社に合った方法を選択する
- 業務の効率化を行う
- PDCAを回す
順番に解説します。
6-1.現状を把握・分析する
業務を効率化するためには、まずは業務全体を可視化して現状を把握する必要があります。
その際に、ムリ・ムダ・ムラとなる部分を分析・整理しましょう。
具体的には、以下の項目を意識しムリ・ムダ・ムラを洗い出してみてください。
・業務担当者は最適なアサインだったか
・業務そのものが属人的になっていないか
・プロジェクトや部署の人数は適切か
・業務フローは現在の業務にフィットしているか
・業務に使用しているツールに使用頻度の少ないものはないか
・業務をこなす上で必要なスキルは習得できているか
・業務を完遂するまでの工数はどのくらいか
・業務マニュアルは用意されているか
・業務マニュアルは更新されているか
6-2.目標を設定する
現状の把握・分析が完了したら、業務の効率化を行う上での目標を設定します。
業務を効率化するためには、従業員の協力が必要不可欠です。
目標設定が曖昧なままだと、従業員のモチベーション低下につながる恐れがあるため、数値を用いた明確な目標を設定しましょう。
例えば、現状分析によって「最新の業務マニュアルが整備されていない」という課題があった場合には、「業務に合わせたマニュアルを作成し工数を10%削減する」などと設定します。
目標を設定することで、この後に取るべき行動が明確になるでしょう。
具体的には、業務工数が多いカテゴリーを抽出し、そのなかから削減できそうな業務をピックアップします。
また業務のなかで、マニュアルに落とし込むことで、より効率化できそうな業務を探し出すのです。
このように、目標設定が何よりも重要である点を認識しましょう。
6-3.自社に合った方法を選択する
業務を効率化するための方法を選択します。
前項でご紹介した通り、業務を効率化する方法は豊富にあるので、一つに絞るのではなく複数選択しておくことがポイントです。
先ほどの業務マニュアルの例で言えば、マニュアルに落とし込みやすい業務は何かを検討するわけです。
マニュアル化の難易度が高い業務を優先的に選んでしまうと、従業員の負担も増してしまいますから、まずは定型的な業務からマニュアルに落とし込むとよいでしょう。
また、従業員の負担を考慮しなるべく繁忙期を避けてスケジュールを立てましょう。
なお業務マニュアルを作成する上で、自社のリソースを圧迫してしまうケースでは、アウトソーシングも同時に検討する必要があります。
このように、業務効率化の選択肢はいくつか持っておくとよいでしょう。
6-4.業務の効率化を行う
実際に業務の効率化を行います。
実施していくなかでトラブルや問題が発生した場合には、従業員と連携を図りながら迅速に対応していきましょう。
まずはスモールスタートで取り組んでみるのがおすすめです。
6-5.PDCAを回す
定期的にPDCAを回すことも忘れてはいけません。
PDCAを回す上で、具体的に以下の内容をチェックしましょう。
- 業務の効率化を行う前と比較してどのような変化が表れたか
- スケジュール通りに進行しているか
- 選択した方法は自社にマッチしているか
課題や問題となっている部分を改善することで、さらなる効果が期待できます。
7.業務を効率化する上での3つの注意点
業務を効率化するにあたって、以下の3つに注意しましょう。
- 必要な業務と不要な業務を見極める
- 現実的な目標を設定する
- 自社に合った方法で取り組む
一つずつ解説します。
7-1.必要な業務と不要な業務を見極める
業務は「必要な業務」と「不要な業務」の2つに分かれています。
少しでも業務を効率化しようと意識するあまり、必要な業務まで切り捨ててしまうと、従業員に混乱が生じてしまい、業務クオリティの低下やコストの増加など、逆効果となってしまう可能性があります。
そのため、必要な業務と不要な業務をしっかりと見極めてから業務を効率化しましょう。
7-2.現実的な目標を設定する
業務を効率化する上で目標を設定しますが、あまりにも現状と目標がかけ離れてしまうと、従業員のモチベーション低下につながります。
その結果、業務の効率化が失敗に終わってしまい、業績不振に陥る可能性があります。
そのような事態を防ぐためにも、「月の残業時間は原則10時間以内にする」「前年度よりも10%のコスト削減に努める」など、なるべく現実的な目標を設定しましょう。
7-3.自社に合った方法で取り組む
業務の効率化を進めても、思ったより効果が表れないということも少なくありません。
そんなときには、実施方法を一度見直してみましょう。
業務を効率化するための方法は豊富にあります。複数の方法を試してみることで、自社に合った方法が見つかるはずです。
8.業務を効率化するにあたってツールを選ぶときの5つの基準
業務を効率化するにあたってツールを導入する際には、以下の基準を参考に選びましょう。
- 搭載されている機能
- サポートの充実度
- コスト
- 操作性
- 導入実績
順番に解説します。
8-1.搭載されている機能
ツールによって搭載されている機能は大きく異なります。
そのため、ツールを導入するにあたって自社の問題が解決できるような機能が搭載されているかチェックしましょう。
8-2.サポートの充実度
ツールを利用している最中にエラーやトラブルが発生することも少なくありません。
そのようなときにサポートが充実していれば、すぐに対応してもらうことが可能です。
そのため、サポートの充実度もツールを選ぶ上での一つの判断基準にしましょう。
8-3.コスト
導入にかかるコストもツールによってさまざまです。
基本的に機能が豊富で使いやすいツールほど、月々のコストはかかります。そのため、自社の予算と相談した上で決めましょう。
8-4.操作性
優れた機能が豊富に搭載されていても、使いこなせなければ意味がありません。そのため、操作性も重要になってきます。
使いやすいかどうかは実際に利用してみないと分からないので、なるべく無料で利用できる期間があるツールを選びましょう。
8-5.導入実績
導入実績もツールを選ぶ上での重要な判断基準の一つです。
なぜなら、導入実績が乏しいツールの場合には、何かしらの問題を抱えている可能性があるからです。
一方、導入実績が豊富なツールは、多くのユーザーから支持されているという証明になります。
導入実績は、Webサイトに記載されていることがほとんどのため、一度チェックしてみましょう。
9.業務の効率化におすすめのツール3選!
業務の効率化におすすめのツールとして、以下の3つをご紹介します。
- Chatwork|Chatwork株式会社
- BizRobo!|RPAテクノロジーズ株式会社
- Misoca|弥生株式会社
9-1.Chatwork|Chatwork株式会社
提供会社 | Chatwork株式会社 |
料金 | フリープラン:無料 ビジネスプラン:500円/月(年間契約の場合の月換算)エンタープライズプラン:800円/月(年間契約の場合の月換算) |
主な特徴 | あらゆる職種や業界で利用されているグローバルにコミュニケーションが取れるさまざまなサービスとの連携が可能 |
Chatwork株式会社が提供しているChatworkは、38万社以上が導入しているビジネスチャットツールです。
タスク管理やファイル管理・ビデオ通話など、チャット以外にもさまざまな機能が搭載されています。
日本語だけでなく、英語や台湾語・ベトナム語にも対応しているので、海外を拠点にしているメンバーとのコミュニケーションもスムーズです。
TwitterやGmail・Googleカレンダーなど、さまざまなサービスとの連携が可能なため、大幅な業務の効率化が期待できます。
9-2.BizRobo!|RPAテクノロジーズ株式会社
提供会社 | RPAテクノロジーズ株式会社 |
料金 | 非公開 |
主な特徴 | スモールスタートできる充実したサポート体制3種類のプランから選べる |
RPAテクノロジーズ株式会社が提供しているBizRobo!は、プログラミング未経験者でも操作可能なRPAツールです。
一連の業務をロボットに覚えさせることで、業務の一部を自動化できます。
また、ライセンス一つで制限なくインストールできるだけでなく、操作方法が学べる動画を公開していたり研修を開催していたり、サポート体制も充実しています。
そのため、初めてRPAツールを導入する場合でも安心です。
プランは「BizRobo! Mini」 「BizRobo! Lite」「BizRobo! Basic」の3種類に分かれており、スモールスタートも可能です。
ただし、料金については非公開となっているので、気になる担当者は一度お問い合わせをしてみましょう。
9-3.Misoca|弥生株式会社
提供会社 | 弥生株式会社 |
料金 | 無料プラン:無料 プラン15:8,000円/年プラン100:30,000円/年プラン100:100,000円/年 |
主な特徴 | あらゆる書類を作成できる3タイプのカスタマーサポートスマートフォンやタブレットからも利用可能 |
弥生株式会社が提供しているMisocaは、見積書や請求書・領収書などを容易に作成できる書類作成ツールです。
書類はすべてテンプレート化されていて、ワンクリックで取引先や商品名を入力できるため、作業時間の短縮につながります。
パソコンからだけでなく、スマートフォンやタブレットから書類を作成することが可能です。
プランによっては、毎月作成できる請求書の数や利用できるユーザー数などが異なってくるので、自社に合ったプランを選択しましょう。
10.まとめ
本記事では、業務の効率化を行うメリットや方法・実際の手順などについて解説しました。
業務を効率化することで、コストの削減や増益などが期待できます。
ただし、従業員から不満の声が挙がる可能性もあるので、一人ひとりの意見を考慮した上で実施することが大切です。
業務を効率化する方法は複数あるので、本記事を参考に自社に合った方法で実施してみましょう。