企業では、人件費やオフィスコスト・IT機器関連コストなど、さまざまなコストがかかりますが、そのなかでも採用コストを削減したいと考える企業も少なくありません。
しかし、どのような方法で採用コストを削減すればいいのか分からないという担当者も多いはずです。
そこで本記事では、採用コストを削減する具体的な8つの方法や実際の手順・注意点などについて解説します。 これから採用コストの削減を検討している担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
1.採用コストとは?計算式について
採用コストとは、企業が人材を雇用する際にかかるコストのことです。
求人広告の掲載や会社説明会の開催・面接の実施など、採用活動のほとんどが採用コストに含まれます。
採用コストの計算方法は以下の通りです。
1人あたりの採用コスト = 採用にかかった総額(内部コストと外部コストの合算) ÷ 採用した人数
例えば、採用活動にかかった金額が300万円で5人を採用した場合、1人あたりの採用コストは60万円となります。
1-1.外部コストと内部コストの2種類ある
採用コストは、大きく分けて外部コストと内部コストの2種類があります。
それぞれの意味は以下の通りです。
- 外部コスト:採用活動において外部に支払うコスト
- 内部コスト:採用活動において社内で使用する際に発生するコスト
外部コストと内部コストの具体例を下記の表にまとめてみました。
外部コスト | 求人サイトへの掲載費 合同で開催される会社説明会への出展費 採用動画を制作する際の外注費 会社説明会で配布するためのパンフレット制作費 |
内部コスト | 採用担当者の人件費 内定者懇親会を開催する交際費 入社するにあたって内定者にかかる引っ越し費用 面接時に求職者へ支払う交通費 |
1人でも多くの求職者に自社のことを認知してもらい、人材を確保する際に発生するのが外部コストであり、求職者や内定者へのフォローをする際に発生するのが内部コストと覚えておきましょう。
1-2.採用コストの相場感
就職みらい研究所が公表した「就職白書2020」によると、1人あたりの平均採用コストは、新卒採用で93.6万円、中途採用で103.3万円であることが判明しました。(「就職白書2020」11ページ目より参照)
ちなみに、前年は新卒採用が71.5万円、 中途採用が83.0万円のため、どちらも20万円ほど増加していることが分かります。
1-3.採用コストの削減とBPRについて
採用コストの削減だけでなく、BPRを実施する企業も増えてきています。
BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、業務内容や業務フローなどを根本的に見直す業務改革のことです。
1990年代のアメリカにおいて、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー氏と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏の2名が提唱した施策となります。
1993年に発表された「リエンジニアリング革命」によって、日本でも普及しました。
BPRを実施することで、業務の効率化や顧客満足度の向上などが期待できます。BPRは採用コストの削減とセットで実施することもあります。
そのため、BPRのことを意識した上で採用コストの削減を行いましょう。BPRについて詳しく知りたい担当者は、以下の記事をご覧ください。
>>BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!
2.採用コストが増加している主な3つの要因
採用コストは、年々増加傾向にあります。
採用コストが増加している要因として、以下の3つが挙げられます。
・少子高齢化による労働人口の減少
・採用活動の長期化
・人材の流動化
順番に解説します。
2-1.少子高齢化による労働人口の減少
日本では少子高齢化問題が深刻化してきており、それに伴い労働人口も減少傾向にあります。
株式会社帝国データバンクが2022年11月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)」を具体例に人手不足の実態を見ていきましょう。
【人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)】
調査期間:2022年10月18日〜10月31日
調査対象:全国2万6,752社(有効回答企業数1万1,632社)
上記調査によれば、人手不足を感じている企業の割合は正社員で51.1%、非正社員で31.0%と発表されています。
この数値は、国内で新型コロナウイルス感染症が拡大した、2020年4月以降で最も高いことから状況が深刻であることを物語っています。
業種別に見れば「情報サービス」が69.1%と最も高く、次いで「旅館やホテル」が65.4%、「飲食店」が64.9%です。
売り手市場が続いているため、企業は求職者から選ばれるためにも、採用動画を制作したり、オウンドメディアを運用したりするなど、さまざまな施策を行っています。
その結果、これまで以上に採用コストが増加傾向にあるのです。
2-2.採用活動の長期化
労働人口の母数が少ないなか、できる限り人手不足に歯止めをかけるため通年採用を実施する企業も増えてきています。
通年採用とは、年間を通じて採用活動を実施することです。
これまでは、期間を設けて実施する一括採用がほとんどでしたが、通年採用を行うことで留学生や既卒者など、さまざまな人材と出会えるようになります。
一方で、採用活動が長期化することで必然的に採用コストも増えていくのです。
2-3.人材の流動化
少子高齢化による人件費の増加や経済の低迷など、さまざまな影響によって日本では終身雇用制度が崩壊しつつあります。
その結果、これまでは一つの企業で長く勤めることが美徳とされていましたが、そのような価値観が薄まりつつあり、現在は転職するのが当たり前となってきています。
人材の流動化が加速したことにより、たとえ新たな人材を雇用してもすぐに退職してしまうため、そのたびに採用コストが増加する悪循環となっているのです。
また、人材の流動化にも関連することとして採用人材の変化も採用コストの増加に影響を与えています。
具体的には、高い技術とスキルを保有するスペシャリストが海外企業へ流出することを防ぐため、できるだけよい待遇で即戦力採用をしているわけです。
スペシャリストを獲得できれば、中長期的に企業への貢献度は高まりますが、採用時にかかるコストは非常に高く、企業によっては頭を悩ませる問題の一つでしょう。
3.採用コストを削減するための具体的な8つの方法
どのような方法で採用コストを削減すればいいのか分からないという担当者も少なくありません。
採用コストを削減するための具体的な方法として、以下の8つが挙げられます。
- リファラル採用を推進する
- 求人広告を見直す
- 選考プロセスを改善する
- オウンドメディアを運用する
- ソーシャルリクルーティングを実施する
- RPOサービスを導入する
- ダイレクトリクルーティングを実施する
- オンラインを積極的に活用する
一つずつ解説します。
3-1.リファラル採用を推進する
リファラル採用とは、自社で働いている従業員の知人や友人を紹介する採用手法のことです。
リファラル採用を推進することで、自社にマッチした人材を雇用しやすくなります。
また、従業員からの紹介によって採用するので、求人サイトに求人広告を掲載するよりも費用を大幅に抑えることが可能です。
リファラル採用と似ている採用手法として、縁故採用があります。縁故採用とは、血縁や婚姻などの理由で雇用する採用手法のことです。
どちらも対象となる人材が異なるので、間違えないように注意しましょう。
3-2.求人広告を見直す
採用活動を実施する上で、多くの企業が求人サイトに求人広告を掲載しています。しかし、いくら掲載しても効果が実感できないことも少なくありません。
そんなときには、求人広告を見直してみるのがおすすめです。
実際に以下の内容を見直してみましょう。
- 掲載時期は適正か
- 自社の魅力をアピールできているか
- ターゲットは明確化されているか
- 他社との差別化は図れているか
3-3.選考プロセスを改善する
多くの求職者は、複数の企業にエントリーしながら就職活動を進めています。
そのため、選考プロセスが多いとほかの企業から先に内定を出されてしまい、途中で辞退されてしまうことも珍しくありません。
その結果、人材を確保できずに採用コストだけが増加していくので、根本的に選考プロセスを改善してみましょう。面接回数を減らしたり、内定を出すまでの時間を短縮したりするだけで多くの人材を確保できるようになり、採用コストの削減につながります。
また、状況に応じて対面での面接ではなく、オンライン面接を導入することで、わずかではありますが採用コストを下げられます。
さらに、インターンからの早期採用枠を設けるなどの工夫をするだけで親和性の高い人材と巡り会えるでしょう。
3-4.オウンドメディアを運用する
最近では、SNSやWebサイトなどのオウンドメディアを運用する企業も増えてきました。
オウンドメディアは求人サイトのように多額の費用がかかるわけではないので、大幅な採用コストの削減が可能です。
また、自社情報を自由に発信することでミスマッチの防止にもつながり、早期離職率の改善が期待できます。
ただし、オウンドメディアを運用するためにはある程度のリソースが必要となります。そのため、自社でリソースを確保するのが難しい場合には、外注化を検討しましょう。
3-5.ソーシャルリクルーティングを実施する
ソーシャルリクルーティングを実施するのもおすすめです。
ソーシャルリクルーティングとは、TwitterやInstagram・TikTokなどのSNSを活用して求職者にアプローチする採用手法のことです。
SNSは10〜20代の若者を中心に多くのユーザーが利用しているため、幅広くアプローチできます。
また、基本的に無料で利用できるため、採用コストの削減が可能です。
ハッシュタグなどをうまく活用できれば、思わぬ即戦力人材とマッチングすることもあるでしょう。
3-6.RPOサービスを導入する
RPOサービスを導入する企業も増えてきています。
RPOとは「Recruitment Process Outsourcing」の略称であり、自社の採用業務を外部に委託することです。
「採用代行」や「採用アウトソーシング」と呼ばれることもあります。
RPOサービスを導入することで自社の業務量が減るので、担当者はほかの業務にリソースを割けるようになり、業務の効率化にもつながります。
また、RPOサービスの導入によって費用はかかりますが、トータルで考えると割安となるケースが多いので、採用コストの削減にも期待ができるのです。
3-7.ダイレクトリクルーティングを実施する
売り手市場ということもあり、近年では企業側から求職者に対して積極的にアプローチしなければ、人材を確保するのが困難な状況となっています。
そのため、ダイレクトリクルーティングを実施している企業も少なくありません。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者に直接アプローチする採用手法のことです。
ダイレクトリクルーティングサービスは、無駄な費用が一切かからない成果報酬型のため、求人サイトに求人広告を掲載するよりも採用コストを削減できます。
また、企業側からアプローチするため、自社にマッチした人材を探すことが可能です。
3-8.オンラインを積極的に活用する
対面で会社説明会や面接を実施する場合、会場を確保したり準備したりするなどのコストがかかりますが、オンラインで実施することによって、それらのコストがなくなります。
求職者も自分の好きな場所で参加できるため、参加率の向上が期待できます。
現在も新型コロナウイルス感染症が流行していることもあり、感染症対策にもなるので一石二鳥です。
ただし、オンラインは通信環境が不安定だと途中で音声が途切れてしまったり、画面がフリーズしたりする恐れがあるため、注意しましょう。
4.採用コストの削減を実施する4つの手順
採用コストの削減を実施する手順は以下の4ステップです。
- 採用コストの現状を把握する
- どれくらいまで採用コストを削減するか目標を決める
- 自社に合った方法で採用コストを削減する
- PDCAを回しながら改善する
順番に解説します。
4-1.採用コストの現状を把握する
採用コストを削減するにあたって、まずは「自社がどのような費用に対してどれくらいかかっているのか」現状を把握する必要があります。
外部コストと内部コストに分けて分析してみましょう。
4-2.どれくらいまで採用コストを削減するか目標を決める
現状を分析したデータを基に、「どれくらいまで採用コストを削減するのか」目標を決めます。
抽象的ではなく、数値を用いた明確な目標を設定しましょう。
また、あまりに現実離れした目標を設定してしまうと、担当者のモチベーション低下につながる恐れがあるので、注意が必要です。
4-3.自社に合った方法で採用コストを削減する
目標を決めたら、先ほどご紹介した8つの方法を参考にしながら、採用コストの削減を実施していきます。
基本的に採用コストの削減を実施して効果が実感できるようになるまでは時間がかかるため、継続的に実施することが大切です。
担当者のモチベーションを維持させるためにも、小さな目標をいくつか設定しましょう。
4-4.PDCAを回しながら改善する
採用コストを削減していく上で、定期的にPDCAを回すことも欠かせません。
PDCAを回しながら改善することで、さらなる効果が期待できます。
時間をかけても採用コストが削減できていないと感じたら、積極的に別の方法を試してみましょう。
5.採用コストを削減するにあたっての3つの注意点
採用コストを削減するにあたって、以下の3つに注意しましょう。
- 担当者のリソースを考えた上で実施する
- 一つの方法だけに固執しない
- 無理に採用コストを削減しない
一つずつ解説します。
5-1.担当者のリソースを考えた上で実施する
採用コストを削減する方法は、大きく分けると以下の2通りです。
・RPOサービスや選考プロセス改善のような業務量を減らす方法
・オウンドメディアの運用やソーシャルリクルーティングのような業務量を増やす方法
このうち業務量を増やす方法を選択する場合、これまで以上に担当者の負担が大きくなります。
その結果、激務に耐えきれず担当者が退職してしまっては意味がありません。
そのため、担当者のリソースをしっかり考えた上で実施しましょう。
5-2.一つの方法だけに固執しない
採用コストを削減するにあたって一つの方法だけに固執してしまうと、期待していた効果と大きくかけ離れてしまうことも少なくありません。
採用コストを削減する方法は豊富にあるので、PDCAを回しながら自社に合った効果的な方法を見つけましょう。
5-3.無理に採用コストを削減しない
企業におけるコストは、採用コストのほかにオフィスコストや機器関連コストなどがあります。
多くの企業が人手不足を課題としていますが、あくまでも採用コストの削減は最終手段です。
そのため、まずはそれ以外に削減できるコストがないかを検討しましょう。
また、無理に採用コストを削減すると担当者の負担が大きくなり、モチベーションや業務クオリティの低下につながる恐れがあるので、注意が必要です。
6.まとめ
本記事では、採用コストを削減する具体的な方法や手順・注意点などについて解説しました。
採用コストは外部コストと内部コストの2種類に分かれており、少子高齢化による労働人口の減少や採用活動の長期化などによって、年々増加傾向にあります。
そのため、少しでも採用コストを削減したいのであれば、本記事でご紹介した方法や手順を参考に実施してみてください。
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