自治体においてBPRが必要な理由とは?メリットや実施事例についても解説!

BPRは、業務の効率化やヒューマンエラーの防止などにも期待できるため、民間企業だけでなく自治体からも注目を浴びています。

BPRとは「Business Process Re-engineering」の略称であり、既存の業務内容や業務フロー・組織の構造などを根本的に見直す業務改革のことです。

名前は聞いたことがあっても、どのような意味なのか知らない職員も少なくありません。

また、ほかの自治体がどのようにBPRを実施しているのか気になる職員も多いはずです。

そこで本記事では、自治体においてBPRが必要な理由や実施するメリット・デメリット・自治体が実施したBPRの事例などについて解説します。 これからBPRを実施するにあたって担当になる職員の方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.自治体においてBPRが必要な理由

自治体においてBPRが必要な理由として挙げられるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。

日本では少子高齢化が年々加速しており、深刻な問題となっているため、地方によっては急激に人口の過疎化が進んでいることも珍しくありません。

自治体は、住民からの税金によってさまざまなサービスを提供しています。

住民が減少すると税収も下がってしまい、これまでのようなサービスを提供するのが困難となってしまいます。

税収が下がったとしても、これまでのようなサービスを提供するために業務の効率化を図る必要があるのです。

また多くの自治体では、現在でも紙ベースで業務を行うアナログ文化が根強く残っているため、まずはデジタルベースでの業務に移行することから始めていかなければいけません。

BPRとは?目的やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!

2.自治体がBPRを実施する3つのメリット

自治体がBPRを実施するメリットは、以下の3つです。

  • ヒューマンエラーが起きにくくなる
  • 業務の効率化が期待できる
  • 労働時間の短縮につながる

順番に解説します。

2-1.ヒューマンエラーが起きにくくなる

集中力の低下や知識不足などによって、日頃の業務でミスすることも少なくありません。

特に自治体では住民に直接関わる業務が多いので、ミスすることによって住民からの印象が悪くなる可能性があります。

BPRでは、実施するにあたって最新のツールやシステムを導入します。

その結果、一部の業務を自動化することが可能となるため、ヒューマンエラーの防止につながるのです。

2-2.業務の効率化が期待できる

BPRでは、既存の業務内容や業務フロー・組織の構造などを根本的に見直すことでボトルネックを洗い出せます。

洗い出したボトルネックを改善することで無駄な業務が削減されるため、業務の効率化が期待できるのです。

2-3.労働時間の短縮につながる

多くの自治体では現在も紙ベースで業務を行っているので、非効率的な労働環境によって、長時間労働が常態化していることも少なくありません。

BPRを実施することで、業務内容や業務フローにおけるボトルネックを洗い出して改善できます。

また、最新のツールやシステムを導入することで、以前よりも効率的に業務が行えるようになり、労働時間の短縮につながるのです。

3.自治体がBPRを実施する2つのデメリット

BPRは、メリットだけではなくデメリットもあります。

自治体がBPRを実施するデメリットは以下の2つです。

  • 職員の負担が大きい
  • 住民から不満の声が挙がる可能性がある

一つずつ解説します。

3-1.職員の負担が大きい

BPRは業務プロセス全体を根本的に見直していくため、職員全員の協力が必要不可欠です。

通常の業務と並行してBPRを実施しなければいけないので、職員の負担が大きくなり、労働環境が悪化する可能性があります。

職員からの反発が起きないようにするためにも、BPRを実施する目的や経緯などを一人ひとりに共有することが大切です。

3-2.住民から不満の声が挙がる可能性がある

BPRを実施する際には、コンサルタントを活用したり最新のツールやシステムを導入したりするなど、コストがかかります。

自治体は住民からの税金によって成り立っているので、BPRの実施にコストをかけた結果、住民から不満の声が挙がる可能性もあります。

住民からの信頼を失くさないようにするためにも、BPRを実施するのに至った経緯やBPRを実施しなければいけない理由などをしっかりと伝えるようにしましょう。

4.BPRを実施するための5つのステップ

BPRは、以下の5つのステップで実施できます。

  • 検討
  • 分析
  • 設計
  • 実施
  • モニタリング・評価

一つずつ解説します。

4-1.検討

検討段階では、BPRを実施する目的や目標を設定していきます。

また、BPRを実施する上で対象とする業務範囲についても明確にしましょう。

4-2.分析

分析段階では、自分たちの現状をABC分析やBSC分析などのフレームワークを用いて分析していきます。

ボトルネックが複数ある場合には、優先順位をつけておくと分かりやすくおすすめです。

4-3.設計

設計段階では、洗い出したボトルネックをどのように改善していくのか戦略を設計していきます。

職員がスムーズにBPRを実施できるようにするためにも、なるべく具体的な戦略を立てましょう。

4-4.実施

設計した戦略を基にBPRを実施します。

BPRは大規模な施策となるため、時間がかかります。

職員のモチベーションを維持するためにも、定期的に小さな目標を設定することがポイントです。

4-5.モニタリング・評価

実施したBPRのデータを基に、モニタリング・評価していきます。

モニタリング・評価する際には、主に以下の項目をチェックしましょう。

  • スケジュール通りに進捗しているか
  • 実施している最中に問題は発生していないか
  • これまでどのような成果があったか

定期的にチェックし、問題があれば修正していきます。

BPRの進め方とは?目的や手法・メリットについても解説!

5.自治体がBPRを実施した5つの事例

実際に自治体がどのような問題を抱えていて、BPRを実施したことでどのような成果を挙げられたのか、気になる職員も多いはずです。

実際に自治体が実施したBPRの事例について「地方公共団体における行政改革の取組」を基に、5つご紹介します。

  • 福島県
  • 鳥取県
  • 埼玉県
  • 山口県
  • 熊本県

5-1.福島県

福島県郡山市では、限られた職員数のなかで施策を効率的に推進するための方法を模索していました。

そこで特定の業務に関わっている職員を対象に業務経験者による座談会を開催した結果、業務量の大幅な削減に成功したのです。

業務量の削減に伴い、ペーパーレスや会議レスにもつながっています。

詳しい内容は、「地方公共団体における行政改革の取組」の3ページに記載されています。

「文書を発送する際は、主管課を経由させない」「開催の必要性の低いセミナーなどは実施しない」など、共通の約束を「郡山市STANDARD」としてまとめているのが特徴です。

5-2.鳥取県

鳥取県では、各学校で取り扱っている帳票がバラバラだったため、教職員の異動時期に無駄な工数が発生していました。

そこで標準化されたシステムを各学校へと一斉に導入した結果、システム化によって無駄な工数が減り、業務の効率化に成功しました。

また、学校の枠を超えたシームレスな情報連携も実現しています。

なお、子どもたちのさまざまな変化を校内の立場の異なる教職員で共有できるなど、大きな成果をもたらしています。

詳細は「地方公共団体における行政改革の取組」の5ページに記載されていますので、参考にしてみてください。

5-3.埼玉県

人口約14万人の埼玉県戸田市では、人口の増加により住民からのお問い合わせ対応に頭を抱えていました。

そこでAIが対応するチャットボットサービスを導入した結果、職員の負担軽減に成功したのです。

住民からも「チャットボットサービスの方が電話より手軽で使いやすい」と好評です。

なお、導入前の実証段階においても住民の約9割がサービスの継続を希望したとあって、サービスの期待度が理解できます。

現在は24時間365日のお問い合わせ対応も実現しており、経済効果は年間540万円にもおよびます。

詳しい内容は「地方公共団体における行政改革の取組」の13ページに記載されていますので参考にしてみてください。

5-4.山口県

山口県では、財政負担や職員数の減少問題が深刻化しており、どのように業務を効率化すればいいのか、頭を悩ませていました。

そこで税務業務や内部管理業務を対象に、RPAを導入することにしました。

RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、これまで人間が行っていたPC上の業務をAIによって自動化する取り組みのことです。

現状の年間作業時間の集計と事務フローを可視化するところから着手し、課題点を抽出、さらにはRPAを活用した標準業務のフロー作成へと移行しました。

RPAを導入したことで、約5,900時間の業務時間削減に成功しました。

詳しい内容は「地方公共団体における行政改革の取組」の9ページを参考にしてみてください。

5-5.熊本県

熊本県では、核家族化が進行したことで子育てに悩む家庭が多くなり、相談対応件数の増加が問題となっていました。

そこで県内全市町村との連携によって、市町村の子育てに関する情報をいつでも入手できるスマートフォンアプリとAIを活用した「聞きなっせAI くまもとの子育て」の開発に成功しました。

その結果、スマートフォンアプリを利用する住民が増えたことで相談対応件数が減少し、低コスト化が実現可能となったのです。

また、住民は市町村の子育てに関する情報を24時間365日入手できるようになり、スマホ一つでさまざまな問い合わせが可能になりました。

現在では、さらなるクオリティの向上を目指して、アプリの開発や運営に一層注力しているとのことです。

詳しい内容は「地方公共団体における行政改革の取組」の12ページを参考にしてみてください。

BPRの実施事例5選!得られる効果や成功させるためのポイントについても解説!

6.まとめ

本記事では、自治体においてBPRが必要な理由や実施するメリット・デメリット・自治体が実施したBPRの事例などについて解説しました。

自治体では、少子高齢化による労働人口の減少やアナログな職場環境など、さまざまな問題を抱えています。

BPRを実施することで上記のような問題が解決するだけではなく、ヒューマンエラーが起きにくくなったり業務の効率化につながったりするなど、さまざまなメリットがあります。

本記事を参考に、BPRの実施を検討してみてください。

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